明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-84 夏物(その6)

ゆうきくんの言いたい放題

 しかし、私が何を提案しようとも、いや私以外の人でも何を提案しようとも、衣替えの時期か変わるとは思えません。もう長い間、夏物への衣替えは7月1日と決まっているものが覆るとは思えません。

 現代の衣替えの節目に現実的に疑問を持っていらっしゃる方も多いと思います。特に袷と単衣の衣替え。5月は袷、6月に単衣と言うのが通説ですが、今5月と言えば暑い日が続いています。5月に袷を着ることに抵抗を感じている方も多いはずです。

 私は4月には襦袢は夏の麻襦袢、表は暑い日には単衣を着ています。5月に袷を着ている人を見ると、「暑くないのかな」と思ってしまいます。お茶をなさる方は、「5月のお茶会は袷です。」と師匠から言われて暑い中袷を着ている人を見かけます。本当に暑いでしょう。暑い涼しいの前に、そんな暑い思いをして、着物が嫌いになるのではないかと心配なります。本当にどうしたら良いのかと思ってしまいます。

 昔は今とは気候の状態も違いますし、暦も違っています。それでもその年によって暑い寒いはありました。その昔の人達が、生活の中でどのように季節感を大切にしながら着物を着てきたのかと言うヒントが書物に残されています。

 17世紀初頭に来日したポルトガルの宣教師ロドリゲス・ツヅが興味深い記録を残しています。「日本教会史」と言う彼の著書は、表題通り、どのようにして日本にキリスト教(カトリック教)が伝わったのか、と言う記録が綴られています。

 ご存じの通り、ロドリゲス・ツヅが来日する50年前にフランシスコ・ザビエルによってキリスト教が日本に伝えられました。彼の著書にはそのような経緯が綴られているのですが、実はそれらは少なく、著書の多くは日本の風土や慣習、その他日本の事情が事細かく綴られています。「日本教会史」と言う題名ではあるけれども、ポルトガルや欧州に日本の事情を報告するための著作だったようです。

 例えば彼は次の様な記録を残しています。
「日本では全てが欧州とは反対である」
と。例えば、欧州では文章を横に書くけれども日本では縦に書く。本の見開きは反対である。そして、衣装に関することでは、欧州では白は慶事、黒は弔事であるが、日本では反対である、と言う事を書いています。

 現代は、日本も慶事には白、弔事には黒ですが、これも近代化、欧米化の結果なのでしょう。日本では、男性の黒紋付が慶事には最高の衣装です。また、白は白装束と言って死に装束でした。侍が切腹の時には白装束です。今も亡くなられた方には白の着物を着せる習慣が残っています。

 そういう意味で、ロドリゲス・ツヅの著作は、当時の日本の事情を正確に伝えているように思えます。

 話はそれてしまいましたが、ロドリゲス・ツヅは日本教会史の中で着物の季節感について次の様に書いています。
「身分の高い人か同輩の者かを訪問する場合には、常にその季節に用いられる衣類を着て行くのが、たとえ他の衣類の上に着るにしても、良いみだしであり、礼儀にかなうとされる。それを下に着ては使い方が誤っている。」

つづく

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