明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-89 着物・・時代と共に(その20)

ゆうきくんの言いたい放題

 消費者セールの会場で、私のお客様がマネキンに捕まり、盛んに商品を勧められていた。そのお客様は硬い方で、いつも代金は現金で払って頂いていた。その商品は、少々値が張る物で、そのお客様は自分には高すぎると思われたのだろう。
「高くてとても買えませんので。」
そう言って断ろうとしたが、マネキンさんは、
「支払いなんか何時でも良いですよね~。」
私の顔を見ながらお客様に奨めている。そのマネキンは商売をどのように考えているのだろう。

 我々商売をしている者は、常にお客様と対峙している。お客様は一回限りのお客様ではない。呉服の場合は特にそうである。お客様とは末永く付き合っていかなければならないのである。

 そのためには、商いに嘘があってはならないのが大前提である。そして、商品を買っていただくにはお客様の事情を十分に理解し、それにあった商品を勧めて行く。

 お客様の事情とは、その方の好みも理解しなければならないし、財布の大きさも知っておかなくてはならない。お客様が嫌いな商品を勧めてはならないし、お客様が想定している金額の範囲で商品を勧めなければならない。お客様が払いきれない様な高価な商品を勧める事はない。

 しかし、そのマネキンは「売れれば良い」とか思っていない。「売る」と言う行為は、お客様が欲しいと思うものを売り、そして代金を回収して商売が終わる。商売人であれば心底から「支払は何時でも良い」とは口が裂けても言わないだろう。

 呉服屋に限らず商売している者は全て自分の責任でお客様に対峙している。その商売人が「支払は何時でも良いですよ」と言うのは、そのお客様が、「そうは言っても必ず早期に払ってくれる」と言う確信がある場合である。それはお客様の事を熟知していなければその言葉は出てこない。

 お客様を全く知らない人が「支払は何時でも良いですよ」と商品を勧めるのは、自分に責任がないと思って行っているのだろう。「売ってしまえば代金の回収は小売屋さん」と言う意識なのだろう。全く無責任である。無責任である前にお客様に大変失礼な行為である。 お客様が、そのマネキンを私が雇った人とでも思ったとしたら、私(結城屋)の信用を大きく失墜すると言う事が分からないのだろう

つづく

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