全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-89 着物・・時代と共に(その22)
ゆうきくんの言いたい放題
呉服業界の展示会における商いの変遷を見て来た。商売は、消費者が必要とする物を必要とする時に揃え、安く提供するのがその役割と思っていた。商売人は、戦後物資のない時代には如何にして商品を揃えるか、消費者にどのように自社の商品を知らしめるのか腐心していた。消費者は必要とする物を売る店を訪ねて商品を購入する。当時は、そのように流通の原則に従って物は動き、人は動いていた。
しかし、その流れは次第に変化し、振り返ってみれば呉服業界は、何ともおかしな業界になってしまっていた。いわば「商品を買っていただく」から「商品を買わせる」へと。そして、価格には何の拘りもなく、消費者を誘って売って行く。
その先には、痴呆老人に物を売りつける商売にも繋がっている。実際、痴呆老人に呉服類を数千万円売りつけられたとして相談を受けたこともある。
呉服を商う者として、業界の将来を心配するのであるが、既に業界自体がそれに飲み込まれてしまっている。
呉服の需要は減り続け、呉服屋に足を運ぶ人の数も減っている。展示会に足を運ぶ人も昔に比べれば遥かに減っているだろう。
しかし、問屋さんを通じて話を聞くと、大手の呉服屋では、展示会はまだまだ盛んだと言う。本当に着物を求めたいと思っている人達には、展示会が一番良いのかもしれない。小売屋の店頭には商品が無くなっている。在庫のリスクを考えて、商品の仕入れを抑えている小売店が多い。私の店でも在庫は極力充実させようとしているが、昔ほどの在庫はなく、お客様の要望に直ぐに応えられない場合もある。
力のなくなった小売店、過激化する展示会の狭間で消費者は右往左往させられている様に思う。着物を着たいと思う人が、極当たり前に着物を買える環境にしなければと思うのだけれども、その答えは難しい。