明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-89 着物・・時代と共に(その5)

ゆうきくんの言いたい放題

 レンタル振袖は、専門の貸衣装屋がある一方で、従来の振袖屋もレンタルに力を入れるところが多い。振袖販売が減少し、それを補うためにレンタル事業を拡大している。

 先日、やって来た小物の問屋さんに聞いてみると、
「振袖屋さんの売上の80%はもうレンタルですよ。」
と言う話だった。成人式で着られる振袖の八割以上はレンタルらしい。

 この振袖レンタルは、貸衣装屋、振袖屋の他にも写真屋が参入している。
写真屋では、それ以前から七五三の貸衣装をレンタルしていた。その延長なのか、記念写真とセットで振袖をレンタルする写真屋が増えて来た。

 七年程前、全国規模の大手の写真屋がレンタル振袖に参入した。その時京都の染屋に必要な振袖を大量発注した。その発注量はべらぼうな物だったらしい。

 その年の京友禅の生産数量を見ると、生産反数全体では前年比26.0%の減少であった。反数にすれば実に9万6千反の減少である。種類別に見ると、着尺はマイナス30.3%、訪問着マイナス36.4%、留袖に至ってはマイナス71.6%である。コロナ禍の影響があったとは言え驚くほど京友禅の生産数量は減っていた。

 しかし、そんな中で振袖は7.1%増加していた。一大手の写真屋の発注で振袖の生産量が増加したらしい。この統計を見ていると、一件の写真屋の注文で京友禅が右往左往しているようで、何とも呉服業界が小さく見えて来る。

 さて、その振袖生産数量の中身だけれども、昔から染められてきた手描きは819反(1.14%)、型染は18,951反(26.56%)、ろうけつ染めは僅か1反、そしてインクジェットは51,554反(72.28%)である。

 インクジェットと言うのは最も新しい染色法で、パソコンのプリンターをイメージすればよい。非常に安価に染められる染色法である。

 昔は無かったインクジェットによる振袖が全体の七割以上を占めている。これは振袖レンタルの増加と無関係ではないと思う。

 インクジェットは振袖屋がセット販売などで使ってきたが、それに加えてレンタル市場がその生産に拍車を掛けているのである。

 振袖のレンタルに高価な手描きの振袖は使えない。使うところもあるかもしれないが特殊なレンタルだろう。一般的な成人式でのレンタルは安価な振袖にならざるを得ないのでインクジェットになるのだろう。

 私のかつての呉服屋仲間で、今京都で着物のレンタルをしている人がいる。一度訪ねて見せてもらったが、全国を相手に大きな商いをしていた。着物、帯、襦袢から小物に至るまで一式でレンタルしている。夕方になると運送屋さんがやって来てレンタルのセットを山積みにして持って行く。
「レンタル市場もこれだけ大きいんだ。」
そう思った。

 棚に積んであるレンタル用の着物を見ていたら、すばらしい友禅の訪問着があった。
「随分良い物をレンタルしているんだね。」
聞けば、高価な着物は以前呉服屋をしていた時の在庫だった。しかし、この業界では染の良いも悪いも分からずに同じように扱われると言う。以前呉服屋をしていたその人は少し寂しそうだった。

つづく

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