全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-92 これでいいのか! 日本の履物事情
毎年この時期になると同じ話題に触れてしまうが、今年は極めつけだった。
先日、山形大花火大会があった。今年は46回目になるが、開催場所は河原を転々とし、今は街の中心にある山形城址で行われている。
そう広くない城址なので、打ち揚げられる花火はそう大きいものではない。安全性を考えて、確保できる面積に応じて花火を打ち上げられる高さが決まっているらしい。打ち揚げた花火の不発弾や燃えカスが周囲の住宅に落ちない様にと言う配慮らしい。
広い河川や会場で行われる花火に比べれば迫力に劣るかもしれないが、街の中心で間近に見られる花火は良いものである。
城址は私の店のある水の町屋七日町御殿堰から歩いて10分足らずの処にある。私の店からは建物が邪魔して見えないけれども、建物の隙間や高いビルの屋上からは迫力のある花火が見られる。花火を見物する人は、城址を取り巻くように近づいて見ている。
花火は午後七時に始まる。午後三時頃から人が出始め、店の周りには花火見物と思われる家族やカップルが出始める。子供連れや若いカップルである。
花火と言えば浴衣である。その数は減ったけれども、やはり花火には浴衣と言う事で浴衣を着ている人が目立つようになる。子供たちに浴衣を着せて歩く家族、浴衣を着た若いカップルなど、この日に限って多く目立つ。
私は着物を着て街を歩く人をよく観察する。どんな着物を着ているのか、どんな出立でいるのか、呉服屋としては興味のあるところである。
子供の浴衣は最近様々で、ミニスカートのような浴衣やらフリルの付いたような浴衣等。浴衣の形そのものが変っている。果たしてそれが浴衣と言えるのかどうか分からないが足基は皆靴やサンダルを履いている。
大人の浴衣は皆浴衣の形をしているが、太鼓の帯を締めている人や浴衣帯に帯締めをしている人など。また最近は大人の女性も兵児帯をしている人が多い。昔はなかったが、半巾帯は結ぶのが難しいのだろう。しかし、足物は靴やサンダルである。
浴衣のカップルがやってきた。女性は遠目にも靴を履いているのが分かった。男性は黒い鼻緒を挟んでいるようだった。しかし、近づいてくると下駄や雪駄ではなくビーチサンダルのような履物だった。
女性が洒落た浴衣を着たカップルがやって来た。男性はTシャツ姿の洋服である。余程着物好きの女性かと思い、下駄を履いていると期待したがやはりサンダルだった。
結局、浴衣に下駄や雪駄を履いた人は一人も見なかった。例年何人かは下駄や雪駄を履いた人を見かけるが、今年は100%いなかった。
年々下駄や雪駄を履く人が減っている。子供に限らず大人までも浴衣に靴やサンダルを履いている。今は、「浴衣には下駄」と言う感覚はもうないのかもしれない。
最近、下駄や草履、雪駄を買いにいらっしゃるお客様にちょっと異変?が起きている。いままで説明した事のない様な事を説明しなければならなくなっている。
つづく