全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-92 これでいいのか! 日本の履物事情(その2)
先日、下駄を買いに来たお客様がいらした。そのお客様曰く、
「うちに下駄はあるのですが、寸法が合わなくて履けないんです。」
大きいのか小さいのか分からないが、寸法が合わないらしい。飾ってある下駄を見ているが、中々選べない。
「どうぞ足に合わせてください。」
そう言って勧めると、飾ってある下駄を足に合わせた。しかし、不満らしい。
「この下駄の踵と小指が出てしまいますね。」
その言葉を聞いて、お客様の言わんとする事が分かった。
それまでもお客様に下駄を勧めると、踵が出てしまう事、小指がはみ出てしまう事に違和感を感じる人が何人もいた。
日本の下駄草履は踵が出る。小指がはみ出るのが当たり前である。下駄草履は親指と第弐趾で鼻緒を挟む。鼻緒は真ん中に有り、片側に親指、反対側に第弐趾から四本の指が並ぶ。当然小指は外側に追いやられて下駄からはみ出てしまう。
下駄草履の鼻緒が真ん中に付いている理由は、「続々きもの春秋6.下駄の鼻緒に関する力学的考察」で触れた。
西洋のサンダル(鼻緒の有る物)は右左があり、鼻緒が内側に寄っている。また踵はサンダルに収まる大きさである。西洋のサンダルを履きなれている人には日本の下駄草履に違和感を持つ人がいてもおかしくはない。
それともう一つは、新しい下駄は鼻緒がきつい。誰もがそう思う。鼻緒は、どんな上手な下駄職人がすげても、履いていると次第に伸びて来る。
初めて下駄草履を購入される方は、靴と同じように試着すれば足にぴったりと思ってしまう。下駄草履は、履き慣れてこそ足にぴったりくるのである。
最近、お客様に下駄草履をお勧めする時に、次の三つの説明は欠かせない物となった。「少々、きついと思いまが、履き慣れて鼻緒が伸びると、あと2~3センチ前に出ますので、ちょうど良いと思います。」
「日本の履物は、踵が少し出て当たり前ですのでおかしくはありません。」
「誰でも小指ははみ出ますが、それもおかしくはありません。」
時には下駄の構造、西洋サンダルとの違いを説明しご納得頂く。
昔は説明しなければならない人は少なかったが、最近は三人に二人は説明しなければならなくなった。大方の人は説明に納得して頂けるが、中には納得頂けなくて、
「しかし、これでは・・・。」
と帰られる方もいらっしゃる。
子供が浴衣に下駄を履かなくなっている今日、次の世代ではこの説明すらも通じなくなるのではないだろうか。
履き慣れた者にとっては、下駄草履雪駄は履き易く楽なのであるが・・・。
つづく