明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-93 業界の次の世代を担う人達(その2)

ゆうきくんの言いたい放題

 五十代の出張員に、
「あなたは会社で何番目に若いの?」
と聞くと、ほとんどが、
「私の下はいません。」
「私の下は三十代が1人です。」
と言った答えである。

 時折、出張員が若い人を連れてくることがある。
「担当交代ですか?」
と聞くと、
「ええ、見習いで連れて歩いているんです。」
と言う答えが返って来るが、たまには、
「はい、今度〇〇と担当が代わることになりました。」
と言う事もある。

 しかし、その多くの場合、しばらくするとまた元の出張員がやって来て、
「彼は退職しましたのでまたお世話になります。」
と言ったケースが今迄何度もあった。若い人はこの業界にはなじめないのかもしれない。

 やって来る若い人は皆他の業界からの転職である。前職を聞いてみると、健康器具販売や自動車販売など同じ営業職からの転職が多いが、呉服業界の営業は独特なのだろう。 呉服業界のややこしい商品名や取引先との古い商慣習も今の若い人にはなじめないかもしれない。

 しかし、多くの若い人が業界に入っては出て行く中で、一生懸命に頑張っている人もいる。立派に手に職を持っていた若者がそれを捨てて業界に馴染んでいる人もいる。私は、業界の行く末を思えば、そう言った人達に是非業界を支えてもらいたいと思うのだが、その苦労は私が業界に入った時とは比べ物にならないほど大変だろうと思う。

 私は異業界(機械メーカー営業)から呉服業界に入った。当時呉服業界は下り坂に入っていたが、まだまだ隆盛だった。

 商品は豊富にあった。私がいた会社は呉服の総合問屋。呉服に関するほぼ全ての商品を扱っていた。呉服業界は商品名を覚えるだけでも大変だった。

 前にも何度か書いたけれども、呉服の商品の名前は難しい。広い意味で使う場合、狭い意味で使う場合。また同じ言葉が人によって違う商品を指していたり、時には反対の意味で使う事すらある。それでも日本人の腹芸とでもいうのだろうか、業界人の間ではその複雑な名称がお互いに十分通じている。

 私も商品名、業界用語を覚えるのに苦労したが、当時は商品が豊富にあり、分からなければ現物を見る事ができた。

 最初の頃、染屋や織屋の人達と話していると分からない言葉の目白押しだった。分からない言葉遭遇するたびに、上司や先輩社員に、
「〇〇と言うのは何ですか。」
そう聞いて一つ一つ覚えて行った。

「御召っていったい何ですか。」
「紹巴というのはどういう織物なのですか。」
「羽二重と塩瀬羽二重はどう違うのですか。」
等々。

 そんな時は暇があれば先輩は私を商品の積んである二階に行って、
「御召って言うのはな、これこれ・・・・。」
と説明してくれた。幸い総合問屋だったので、ほとんどは現物を見る事ができた。  しかし、今の若い人達はそうは行かない。

つづく

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