全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-94 きものの知識 1「友禅染」その4
全て糸目が引かれたら染色に入る。糸目は花弁の柄や葉っぱの柄などが糸目で閉じられている。それに一つ一つ染料を挿して行く。まず色を決める。どの染料をどこに挿すのか、それを決めるのはとても大切な作業である。同じ緑の葉っぱでも、どの葉っぱにはどの染料を挿すのか、手前の葉っぱと奥の葉っぱでは色や濃度が違う。明度や彩度の違いを考えながら色を決めて行く。言うまでもなく友禅染は色の集合体なので全体の色のバランスが命である。どんなに細い糸目を上手に引いても色のバランスが悪ければその友禅は台無しとなるのである。
色の挿し方も職人技である。一見塗り絵の様にも見えるが、様々な技が駆使される。
一枚の花弁の中には元は白く先が赤い物もある。ボカシである。ボカシはブラシで擦りながら一枚一枚仕上げて行く。また、布の下から電熱器などで温めながら、染料の微妙な乾き具合を考えながら染めて行く。もちろん染料がはみ出してはならない。熟練と根気のいる仕事である。
絵柄に染料を挿し終えると、次に地色を染めなければならない。
小紋や絵羽柄の柄付けには、総柄と飛び柄がある。総柄は文字通り全てに柄がある物で、飛び柄は飛び飛びに柄が配してある。柄の部分は色を挿すが、地の部分は白生地のままである。しかし、総柄と言っても、隙間なく柄で埋め尽くされてる訳ではなく、総柄であっても地の部分は少なからずある。その柄の隙間とも言える地の部分を染めなくてはならない。地の部分は柄に比べて広いので染料を筆で指すのは大変である。刷毛で一気に染める為に染料を挿した柄の部分を糊伏せする。柄を全て糊で覆って、上から刷毛で染めても柄の部分は染まらない様にするのである。
地が染上がったら色を定着させるために蒸して糊を落とす。糊を落とす為に水を使うのだが、昔は川で行っていた。色とりどりの友禅の反物(約12メートル)が何本も鴨川に揺れる様は友禅流しとして風物詩になっていた。
しかし、ピーク時には大量の友禅流しが行われたために鴨川の水質汚染を引き起こし、現在はイベントの時にしか行われていない。現在は生産反数がピーク時の15%程度となってしまいましたが、水洗は工場で行われている。
糊を落とした後、湯のしをして整理すると友禅の反物となる。物によっては刺繍や金銀白加工も行われる。こうして染められるのが宮崎友禅斎の考案した友禅染である。
友禅染は糸目による防染により細かい柄もくっきりと描くことができるようになり、白生地をカンバスとして自由に絵柄を描けるようになった。
最初に述べたように、「友禅」と言う言葉は広い意味にも狭い意味にも使われる。はっきりと区別されて使う呉服用語に「型友禅」と言う言葉がある。「型友禅」と区別する為に上述した宮崎友禅斎の考案した友禅染は「手描き友禅」と呼んでいる。意識して「手描き友禅」「型友禅」と言う分には、ほぼ正確にその区別を言い表している。
つづく