全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-94 きものの知識 1「友禅染」その5
「型友禅」はその染め方に於いて「手描き友禅」とは全く異なる物である。歴史は「手描き友禅」よりも浅く、明治のころに外国から化学染料が入ってからである。
「型友禅」は「手描き友禅」の様に糸目は引かず型を用いて染める技法である。「手描き友禅」と異なるのは、染料を混ぜた糊で型を使って染める事である。工程としては次の様である。
まず原画を描く。これは「手描き友禅」と同じである。その原画を元に型紙が彫られる。染める柄が一色の場合は型紙が一枚で良いが、多色の場合は型紙が色の数だけ彫られる。浮世絵や版画と同じである。色の濃淡も含めれば一型あたり数十枚の型が用いられる場合もある。型の長さは約80cmである。
今は少なくなったけれども絵羽柄を型友禅で染めようとすれば、一反分、即ち約13m分の型を作らなくてはならないので、16~17枚の型を作らなくてはならない。その一枚分につき数十枚の型を作るとすれば、絵羽の着物一枚分に使う型は途方もない数になる。
型紙を彫るには型紙職人が必要である。「手描き友禅」では必要ない型紙職人だがこれも大変な熟練を要す。
そして型紙を使って染める職人も非常に高度な技術が必要である。
一反の着物を染めるには型を継いで何度も染めなければならない。型を継いだところが少しでもずれてしまえば、柄がズレてしまう。ズレない様に慎重に継がなければならない。上手く型を継いだとしても、もしも最初染めた型がほんの少し傾いていたとしたら、一反ズレずに染めれば、最後(12メートル先)は型が生地からはみ出してしまう。
また、色の数だけ重ねた時も少しでもズレれば台無しになってしまう。重ねて型を置く時も高度な技術で慎重に行わなくてはならない。
「手描き友禅」「型友禅」と言うと、「型友禅」は「手描き友禅」に比べれば、簡単に染められると言う印象を持たれるかと思いますが、「型友禅」は「手描き友禅」と同じように非常に高度な技術と手間を要する染色法である。
染料は糊に混ぜられて型で染める。実際に染める染料を作るのも職人技である。染料を糊に混ぜて、実際に布に塗り蒸して、最終的に思った色になるように調整する。そうして一色一色創って行く。
「手描き友禅」と「型友禅」の大きな違いは、「型友禅」には「手描き友禅」のような糸目はない。それを持って両者を区別する事も出来るが、捺染やインクジェット等他の染色法でも糸目の無い染物ができる。染めるのに型を一枚一枚使う「本型染」と捺染やインクジェットの染物とは全く違ったものである。
染色の技法や特徴に拘るとかえって本当の良さを見落としてしまう事もある。「型友禅」は、決して「手描き友禅」を簡略化したものではなく、全く別の染色法と見て良い。
型を使うメリットは、一度型を作ってしまえば、同じ物が沢山できる事にある。しかし、最近は需要が少なく、型を作っても採算が採れるほど染める枚数が無く、本当の型友禅は少なくなってきている。
つづく