明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅱ-ⅳ 展示会 (その8)

ゆうきくんの言いたい放題

以前、呉服屋の展示会の手伝いに行った問屋の社員が次のような事を言っていた。

「その展示会では販売員が集客したお客様を会場に連れて来て着物の購入を奨めるんです。しかし、その販売員がお客様に言う言葉は「お似合いですよ」「安いですよ」「お得ですよ」の三言しか言えないんです。」

商品の知識も着物の知識もない人が様々な餌を用いてお客を集め展示会に連れて来る。それを待ち構える人が特定の商品を奨める。お客様が「金がない」と言えばそれを工面する人が出てくる。

展示会ではオートメーションの如く売る機能が実に巧く働いている。

商品を売ることは呉服屋の生業だが、展示会ではいったい何を売っているのだろうという疑問が沸いてくる。利ザヤだけを求めて商品の価格を吊り上げていることに何時消費者は気がつくのだろう。

消費者の目が覚めたとき、利ザヤを稼いできた業者は、十分に儲かったからと業界から離れて行くだろう。そして残された呉服業界、と言うよりも日本の着物の文化はどうなってしまうのだろうかと心配である。

本当に着物を愛する人、日本の文化を守ろうとする人達には何ができるのだろうか。

商売人がお客様に説教するなどありえないが、あえて私は消費者にお願いしたい。

「着物の本質を見ていただきたい。価格品質ともに極めて分かりづらい着物ではあるけれども、日本の文化である着物とはどういうものなのかを知っていただきたい。自分の目で見て、自分で判断できる環境で着物を見ていただきたい。その上で、高価な土産を持っての度重なる勧誘、様々な演出、甘言の裏に何があるのかを分かっていただければ日本の着物は生き続けることができる。」

展示会はもはや消費者の判断を狂わせる雑音の坩堝と化してしまったことは残念である。

消費者に、より多くの着物、作品を見ていただき、着物の良さを分かっていただく。そして、欲しい着物があれば消費者自身の判断で買っていただく、と言った展示会の本来の姿に戻すことはできないのだろうか。

今日の「展示会」の多くは、「買っていただく場」ではなく「買わせる場」になっている事は覚えておいて頂きたい。

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