明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅱ-ⅶ 何でも売る呉服屋(その2)

ゆうきくんの言いたい放題

さて、表題に記した「何でも売る呉服屋」とは、上記に記した「呉服に関する商品は何でも売る」店を指すのではない。最近の呉服屋は、呉服以外の物を何でも売る。何でもと言っても、そこには「儲けやすい物」と言う制限が付いている。

宝石、毛皮、高級バック、絨毯から健康器具まで、呉服屋では何でも売っている。

呉服の展示会に行ったことのある人ならば経験したことと思う。そこでは宝石、毛皮など呉服以外の高額な商品が並べられていることがある。また、宝石や毛皮、健康器具、絨毯などの単品催事を行う呉服屋もある。呉服屋に慣れた消費者であれば格別違和感を感じなくなっているかもしれない。

私の店でも昔、問屋からそのような商品を扱うように奨められたこともあった。また、呉服とは全く関係のない商社の営業マンがやってきて「宝石を扱いませんか」「毛皮の催事をやりませんか」と誘ってきたことがあった。

宝石、毛皮、高級バックと言っても私には商品知識も無ければ相場観もない。無責任な商売はできない、と言うと、その営業マンは「客を集めてくれれば、あとはこちらで説明して売りますから。」ということだった。

何故、呉服屋で呉服以外の高額品を扱おうとするのだろうか。

呉服屋にしてみれば、着物が売れないご時勢で、何とか売上を確保したい気持ちもあるのだろう。そして、それが高額品であれば手っ取り早く儲けられる。客を集めさえすればあとは全て商社から派遣された専門家がやってきて説明して売ってくれる。

商社にしてみれば、狙うのは呉服屋が持つ名簿である。高額品を買いなれた名簿を持っている呉服屋は格好のターゲットである。高額品を買う消費者を求めている商社、着物以外に売上を手っ取り早く創りたい呉服屋の利害は一致している。

しかし、呉服屋は果たして消費者に対してそのような商売に責任が持てるのだろうか。

商品知識も無く相場観にも疎い人間が消費者に高額品を売る責任をどう考えているのだろうか。

もちろん、商品を扱うに当たってはいくらか勉強するかもしれないが、それはどれほどのものだろうか。宝石一つとってみても、どれだけの知識をもって消費者に説明できるのだろうか。「このダイヤモンドは・・・」と言って販売する裏にはどれだけダイヤモンドの知識が必要だろうか。健康器具を扱うのに、本当にその機能を理解して販売しようとしているのか。はなはだ疑問である。

それは呉服を裏返せば話は早い。

呉服を売るのにどれだけの知識が必要か。商品知識、仕立の事、価格(相場観)等々。うろ覚えの知識で販売できるものではない。いや、販売はできるだろうが、それが何を意味するのかを考えればよく理解できると思う。

呉服屋はあらゆる販売方法を駆使して、あの手この手で高額な着物を売る術に長けている。そして、その術をもって高額品であれば何でも売ろうとする呉服屋が多い。

呉服屋の中には、きちんと専門部隊を設けてそのような商品を販売しているところもあるが、多くはただ売るための商売になっているように思える。

扱う商品が高額であるだけに、その弊害のしわ寄せは全て消費者にのしかかっている。

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