明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 きもの春秋終論

Ⅱ.きものの販売手法 ⅷ呉服の商売とは

きもの春秋終論

「きものの販売手法」として種々書き連ねてきたが、呉服の商売をしている私自身が「呉服の商売とは?」と自問自答してしまうことしばしばである。「きものの販売手法」に限らず「商売とは何だろうか?」と考えてしまう。

 商売とは物を売って(あるいはサービスを提供して)対価をもらうことである。仕入れ値と販売価格の差が粗利となり経費を差し引いて利益となる。商売をする者は商売人と呼ばれ、商売人である限りできるだけ利益を出そうとする。多くの利益を出すことが商売成功の証である。

 私も商売の道を志した。京都の呉服問屋で修行をして山形に戻り30年以上になる。しかし、今でも解せないことがある。

 京都に修行に行った時、学ぶべきは商品知識と商売の手法だった。それらは問屋の先輩社員に教えられ、また取引の呉服屋の手法を見て覚えて行った。しかし、そんな中で次の様な会話がなされていた。

「こうやればこの商品は売れます。」

「お客様に買う気にさせるにはこうすれば良いです。」

「初めてのお客様にはこのようにアプローチします。」

「こうやれば客は『ウン』と言います。」

いずれも私には違和感のあるものだった。

 商売は、商品を欲しいお客様に売るのではなく、商品を欲しいと思っていない人に如何に売るかである、とでも言っているようだった。それは哲学にも等しいのではないかと思えるものだった。

 多くの利益を出すこと、イコール売上を伸ばすこと、これは商売上間違いがない。売上を伸ばすこと、より多くの商品を売ることは商売の目的である。しかし、もう一つ商売には重大な目的、使命があるのではないだろうか。

 商売の言葉で「三方良し」というのがある。三方とは「売り手」「買い手」「世間」のことである。「三方良し」とは商売は「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つであるという。

 商売をすることは、売り手にとっても買い手にとっても、また世間にとっても良いのが「三方良し」である。

 売り手にとっては、商品が売れる。(儲かる。)

 買い手にとっては、欲しいものが手に入る。(適正な価格でと言う意味も有るだろう。)

 世間にとっては、世の中を豊かにする、景気を良くする等の意味があるのだろう。

 商売が巧く行くことは自分(売り手)にとって良いものであることは言うまでもない。しかし、買い手や世間を害するものであってはならない。売り手だけが良く、買い手や世間が害を受けるものは詐欺と呼ばれる。それは売り手がいくら儲かっても商売とは言えない。

 正当な商売の範疇であるかどうか、それは一線を引けることではないけれども現在の呉服の商売は余りにも偏っているのではないだろうか。少しでも正当な商売に戻していかなくてはならないし、それができなければ、呉服業界は益々衰退してゆくように思われる。

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