明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅵ-ⅰ「中華そば屋」のような呉服屋(その3)

ゆうきくんの言いたい放題

仕立て替えのきものを持ってくる人同様に、仕立てをする人が来店される。「半纏の衿に使う黒い布はありますか。」「麻の裏襟ってありますか。」など、きものを仕立てるのに必要なパーツを求めに来店される人もいる。「黒八」「麻裏襟」など私の店では当然と思ってそろえているが、お客様は「あるんですか、よかった。」と言って買って帰られる。

今の呉服屋は、きものを売ることに専念するあまり、仕立てに必要なパーツやそれに伴うサービスなどが欠けているように思える。聞けば八掛さえも置いていない呉服屋も多いという。

八掛は袷のきものを仕立てる際には必需品である。しかし、小紋を袷で仕立てる際、八掛の色を合わせるには何枚もの八掛を用意しなければならない。七色の系統の八掛を十枚ずつ用意しようとすれば七十枚の在庫が必要となる。その在庫負担を嫌ってか、八掛の在庫を持とうとしない店が多いらしい。そういった店では八掛の色合わせはカタログで行って必要なものだけ注文するらしい。しかし、カタログの小さな色見本では中々ピンと来ない。

私の店では八掛を十分に在庫しているつもりだけれども七十枚も置いていない。実は実際にお客様が選ばれる色は決まっていて、七十枚の内には絶対売れない色も多数ある。それらの色は長年八掛の在庫を持って商売をしていればわかることなのだけれども、カタログに頼っていてはその感覚は磨けないだろう。

「黒八」「麻裏襟」「八掛」の他「別珍衿」「メリンス地」等、昔から呉服屋で扱ってきたものをいつでもお客様に提供できるようにしているが、それらの売り上げはそう大きなものではない。半纏の衿や袖口に使う黒八は一着分でせいぜい千円前後である。年間の売り上げにしても一万円もないかもしれない。しかし、それらはきものを仕立てる時、是非とも必要なものである。そして、きものを盆栽にせずに生活の必需品としてとらえた場合誰かが供給しなければならない。それは呉服屋の役目である。

今、呉服業界では様々な商品が開発され創られている。展示会で大々的に喧伝され、売上を創っている。その一方で、昔からの呉服屋のサービスを求めている人の居場所がなくなってはいないだろうか。

今風のラーメンに隠れて頑なに昔の味を守っている中華そば屋さんを見習いたいと思う。

着物のことならなんでもお問い合わせください。

line

TEL.023-623-0466

営業時間/10:00~19:00 定休日/第2、第4木曜日

メールでのお問い合わせはこちら