全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-ⅷ 呉服屋がなくなる時(その2)
その昔(30年前)までは、月に何度も来店されるお客様が何人かいらした。月に何度とは言わなくても、時々顔を見せるお客様もたくさんいらした。しかし、最近はそのようなお客様はとんと少なくなってしまった。そのようなお客様は、着物が好きで新着の着物を見に来たり、着物の話をしたくていらっしゃるお客様だった。着物を着る機会も興味もあったのだろう。
来店客の減少は店の売り上げに直結している。それに耐えられずに店を閉める呉服屋も多い。しかし、このような、云わば自然減とも言える呉服の需要の減少に業界はまだまだ耐えられると私は思っている。
私の店も売上はピーク時の半分以下になったけれどもまだまだ続けている。お客様の来店頻度は落ちているけれども私の店が見捨てられたわけではない。古くからのお客様や以前買っていただいたお客様など、多くのお客様が頻度は減ったと言えども来店していただいている。
それまで月に一度来店されていた方は半年に一度、年に一度来店されてた方は三年に一度、と言うように必要な時には私の店を頼っていただいている。中には十年に一度、二十年に一度のお客様もいる。来店の動機は、「娘が嫁入りするので」「昔仕立てた訪問着が若くなったので」「結婚式に出るので」など。また、「嫁入りの時に仕立てた着物を娘の寸法に仕立て替える。」「丸洗いしてください」などのメンテナンスの場合もある。
いずれも、着物を着る頻度が少なくなり来店の頻度も減ったけれども、必然的な需要で来店されるお客様ばかりである。
着物の需要は減っても確実に必然的な需要は残っている。需要の減少に耐えられずに閉めた店のお客様が行き場を失い来店される場合もある。需要の減少を世の流れと捉え、それでも間違いのないサービスを続けていれば、間口を狭くしながらも十分に生き残る余地はある。
着物の需要の減少は残念なことではあるけれども、少ないながらもお客様が求めているサービスを如何に守れるかが呉服屋に求められている事だと思う。
着物の需要の減少以外に呉服屋が店を閉めなければならなくなる原因に、着物の一部アイテムの消滅がある。簡単に言えば、呉服屋は続けていても売るべき商品がなくなってしまう、と言うことである。
織屋や染屋、その他メーカーが次々に倒産や廃業で店を閉め、商品の供給事情は変化している。需要の減少に伴ってメーカーの数が減っているので、需要に対する供給の量にそう問題はないのかもしれないが、問題はその中身である。
つづく