明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-62 ミスユニバース(その2)

ゆうきくんの言いたい放題

 この件で私が思うのは、このような大切な場で、何故日本人のデザイナー、それも日本の伝統に造詣の深いデザイナーを起用しなかったのかと言う事である。「これが日本の衣装」「これが日本のイメージ」と言う衣装を創作するのであれば、外国のデザイナーには無理がある。デザインしたとすれば、それは「外国人による日本のイメージ」の域を出ない。
 世界の舞台で行われる料理大会で、中国料理を日本料理の板前や欧米のシェフに創らせて披露するようなものである。日本の寿司を紹介するのに外国の寿司店の板前が握るようなものである。

 逆に、我々日本人が外国の文化を正確に理解しているのかと言えば、そうとは言えない。その国の文化を研究又は深く携わっている人の中には、その国の人達と同じ位にその国の文化を理解している人もいるには違いない。

 しかし、一般の人が、「中国通」とか「イタリアには何度も行っている」と言う人でも本当にその国の文化を理解しているかどうかは疑わしい。

 日本人が作る中華料理と中国人が作る中国料理はまるで違った味がする。中国の場合、国土が広大なので地方によって味も違えば料理法も違う。日本の中華料理は美味しいのだが、それが中国の文化そのものを反映したものではない。

 私は外国製のチョコレートは余り好まない。チョコレートを舐めながらウイスキーを飲むのが好きだが、外国製のチョコレートは香料が違う。有名なブランドの外国のチョコレート、それも現地で作られた、いわば本物の外国のチョコレートは香料が違う。その国の人達が好む味なのだろう。

 中国の人達は、日本の中華料理を中国の本場の料理だと言われれば怪訝な顔をするかもしれない。日本で市販されているチョコレートをベルギーやフランスのショコラティエはどのように評価するだろうか。

 そういう意味で、今回の件は、批判している人達と同じように、「日本の文化が誤って外国に伝わらないか」と心配している。

 しかし、内向きに考えると「果たして日本人は、自分たちの文化を正しく理解して海外に発信できるのだろうか」と言う疑問も同時に湧いてくる。事きものに関してはそう思わざるを得ない。

 最近の結婚式で、新郎が白い紋付を着ているのをよく見かける。私の店のある「水の町屋七日町御殿堰」でも良く前撮りが行われるが、白紋付の新郎は多い。

 日本で白装束は死を意味する。武士の白装束は切腹の時に着られる。または神主や山伏など世俗を離れた人の衣装である。

 個人が、その好みに任せて伝統に反する着方をしてしまう事もあるが、日本の伝統衣装である着物を守るべき立場にある呉服業界が、自ら伝統をないがしろにすることも多い。

 年配のご婦人に振袖を着せようと言う動きもあった。結城紬の黒留袖を普及させようとする動きもあった。

 それらは、余りにも突拍子もない企画であったので長続きせずに市場から消えて行ったが、結婚式の白紋付、浴衣の比翼など、気が付かないうちに伝統とは正反対のしきたりが浸透してきているように思える。

 日本人が日本の伝統文化を海外に知らしめようとするには、まず自分達日本人が日本の伝統文化を正しく知らなければならない。その上で初めて日本の文化を正しく海外に知らしめることができる。

 世界の人達は、少なからず日本の文化に注目している。寿司や天婦羅、そば。きもの、芸者、茶道。最近は盆栽や錦鯉など。それだけに、海外の人達には、正確な日本文化を知っていただきたいと思う。

 この度の件は、事件として批判するとともに、内向きに日本人が反省する機会でもある。

 (次回は「芸者」について書きます。(どうしても書きたくなった。))

  来週、1月2日は休ませていただきます。

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