全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-63 芸者(その2)
今、山形には5人の芸者さんがいる。最高齢は98歳で、全国の現役最高齢の芸者さんである。一人は40代だけれども他は皆高齢の域に入っている。山形の芸者文化も高齢化が進み、この先心もとない。
さて、「芸者」と聞くとどんなイメージを持つだろうか。特に女性の方は余り良いイメージを持たないかもしれない。夫が、
「忘年会は芸者を総揚げにして・・・。」
と言えば、良い気がしないかもしれない。
だいぶ昔の話になるが、息子が小学校を卒業する時に謝恩会を料亭で行った。日が悪く、と言うよりもお日柄が良く、卒業式が大安吉日だったのでホテルなどの会場はいっぱいで予算の少ないPTAはお断りだった。学区内の料亭の女将さんの計らいで、料亭での謝恩会となった。せっかくだからと思い、
「芸者さんも呼ぼうか。」
と提案したところ、一部の父兄(ではなく母親)からは猛烈な反発があった。結局、芸者さんは呼ばなかったが、私は内心、
「これじゃ芸者さんが可哀そうだ。」
と思った。
芸者さんとは何をする人なのか、何を生業としているのか、相当に誤解されている。
芸者とは、その名の通り「芸をする人」である。芸者さんの芸は、踊り、唄、三味線、鳴り物と言った歌舞音曲である。芸者さんや舞子さんは日々それらの芸の稽古に励んでいる。
芸者さんによって得意な芸があり、立ち方 (踊り)が得意な芸者、地方(唄、三味線、鳴り物)が得意な芸者がいる。座敷では、それぞれの得意な芸を担当している。
芸事は一般にそうだけれども、とてもお金が掛かる。師匠について芸を磨くわけだが、「よくそこまで」と思えるほど稽古をしている。
三味線を弾く芸者が小座敷で、客が、「〇〇を唄うから弾け」と言われれば弾かなくてはならない。なじみの客であれば得意の曲目はしっているが、そうでない場合でも客の要求に合わせて三味線を弾く。客が歌うのは、小唄、端唄、俗曲、どどいつ、民謡など何をリクエストするか分からない。それでも一流の芸者は合わせて三味線を弾いてくれる。どのくらいの曲を覚えていればそのような事ができるのだろう。出来る芸者は、三味線の本当のプロである。
踊り(立ち方)も同じである。客に「××を唄うから踊れ」と言われて踊るには、相当の踊りを身に付けていなければならない。どちらも、誰でもできる生業ではない。
芸者は夜の職業と思われているかもしれないが、日中はそれ以上に、特に若い芸者は芸の稽古に励んでいる。 芸者に求められるのは芸ばかりではない
つづく