明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-63 芸者(その3)

ゆうきくんの言いたい放題

 芸者は客を相手にする商売である。「客を相手にする」と言えば、我々呉服屋もそうだし、魚屋さん、床屋さんもお客さんを相手にする。呉服屋はお客さんに着物を売り、魚屋さんは魚を売り、床屋さんは散髪と言うサービスを売っている。

 では、芸者は客を相手に何を売っているのか。芸を売るのも一つの仕事である。舞台で唄や踊りを披露する。客の踊りに合わせて唄ったり、唄に合わせて三味線を弾いたり踊ったりする。しかし、それは極一部である。宴会の間中ずっと踊ったり唄ったりはしない。芸者が売るのは、宴会を盛り上げる雰囲気創りである。

 酒席の宴会を盛り上げるのは難しい仕事である。不特定多数の人達が宴会を催す。仲間内の宴会もあれば、商店街の集まりもある。政治的な団体であったり、また学術的な集まりもあるだろう。芸者さんはそのどんな人達の宴会であっても、それに合わせ、そこに集う人達を満足させなければならない。

 職種だけではなく個人的にも様々な個性の人達が集う。酒が入ると陽気になる人。無口な人から気難しい人まで。酒が入ると行状の悪くなる人もいる。常連さんであれば、誰がどのような人かは分かる。私の飲み仲間でも芸者さんは、誰がどのような人かは知っている。そして、それぞれに対応するのである。

 しかし、一元さんとなると難しい。初めて会う人がどのような人なのか、どのような知識を持っているのか、性格はどうなのか、計り知れないが、座敷では対応して行かなければならない。豊富な知識と細心の心配りが必要である。

 座敷に入るなり、場の雰囲気を読み、誰が上座なのか、どういう人達がいるのかを読み、即座に対応しなければならい。宴が始まれば、退屈している人はいないか、酒が空いているのはどの席かなど常に気を配っている。

 酒席で接客するのは、我々所謂商売人に比べて遥かに大きく深く幅の広い力量が必要である。それができるのが芸者さんだった。

 かつて日本の宴会には芸者さんは欠かせなかった。花見に行くときも芸者を伴って行ったと言う。明治時代に日本を訪れたイギリスのカメラマンは、日本の芸者文化を絶賛している。どんな宴会でも芸者さんが場を盛り立ててくれる。そして、「日本の宴会に比べれば、イギリスの宴会は何とも面白くない宴会である。」とも言っている。

 また、そのカメラマンは次の様にも言っている。
「日本の芸者の話をすると皆一様にある種の感慨を抱く。それは吉原の花魁と区別がつかないのである。」
その言葉は、現代日本の人達にも通じる。現代日本人には本当の芸者の姿が分からず、吉原の花魁と混同してしまっている。今「芸者」と呼ばれる人は、「温泉芸者」「枕芸者」などと何が何だか分からない名称に使われている。それが為に本当の芸者さんたちは誤解されている面がある。

                                   つづく

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