明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-83 得する街のゼミナール「きものの見分け方」(その3)

ゆうきくんの言いたい放題

 付加価値は主観的なものです。「〇〇作家の作品」と言っても、その作家を知っていて、その作品が素晴らしい事を理解している人には確かに「付加価値」としての意味はありますが、知らない人にとっては何の価値もないでしょう。

「高名な実力実績のある作家の作品は価値がある」
と言う事は言えます。しかし、
「作家物でない商品は価値がない」
とは言えないのです。

 最後に結論として申し上げようと思っている事なのですが、着物を選ぶ時には付加価値は全て取り払って、自分がその着物が本当に好きなのか、着てみたい着物なのか、締めてみたい帯なのかを第一に考えて選ばれたらよろしいかと思います。

 客観的にきものの良し悪しを決めるのは、「素材」と「手間」であります。きものを見る場合、どんな素材を使って、どのような手間で創られているのかを考える事は、きものを見分ける上で大切と思います。

 と言う訳で、「素材」と「手間」について具体的にお話ししたいと思います。

 では、まず「素材」について。

 素材が良ければそれによって創られたものは良い物、というのは誰しも認める所と思います。良い素材の材料で調理した料理は美味しい、と誰しも思います。きものも同じです。

 きものの素材とは何でしょうか。色々ありますが、一番に揚げられるのは「絹」です。きもの、帯を問わずに絹が素材として使われています。「絹が素材」といいましても、「絹糸」もありますし、それで織られた「白生地」もあります。白生地は半製品とも言えますけれども、友禅の完成品から見れば素材と言えます。

 まず「絹糸」についてお話しします。

 絹糸にも良し悪しがあります。ざっくり分類すると、生糸、絹紡糸、くず糸があります。普通きものに用いられるのは生糸ですが、絹紡糸が使われることもあります。絹紡糸とは生糸を取った後に残った短い繊維を紡績で糸にしたものです。

絹紡糸で織った生地は「膝が抜ける」とよく言われました。糸が弱いので、膝の部分を畳に擦り付けると白くなってしまう事を「膝が抜ける」と言っていました。生糸の反物と絹紡糸の反物は見てわかるものでありませんが、今絹紡糸で織られた着物の生地は殆どないかと思います。私も最近見たことがありません。

 絹紡糸の生地は生糸のそれと比べて遥かに安くできるのですが、今はそう言った需要はないのでしょう。

 生糸にも良し悪しがあります。

 日本では昔から品種改良を繰り返しながら良質の生糸を生産してきました。明治になって国を開き、欧米と交易を始めた時の稼ぎ頭が生糸です。欧米でも日本の生糸は一級品の評価を頂きました。

 良い生糸とは、糸が細く太さが一様なものです。真っ白い縮緬生地を織るには不可欠のものです。皇室の御養蚕所では「小石丸」と言う品種の蚕が奈良時代から育てられてきました。糸が細いうえに強度もあります。

 小石丸だけではなく日本は様々な品種を育ててきました。昔蚕は全国で育てられていました。蚕を育てる桑畑もそちらこちらにありました。私の家の蔵も元は蚕を飼う蔵だったと言う話です。

 そう言った日本の蚕は次第に減り今では殆ど絶滅状態です。原因は、人件費の高騰等で養蚕は採算が合わなくなってきた事。それに加えて外国産の生糸が入ってきたことです。

 今世界の繭生産量で断トツなのは中国、そしてインドがそれに続いています。30年前頃には日本の輸入量の一番はブラジルと聞いていましたが、今ブラジルではほとんど生産していないようです。今輸入の大半は中国の様です。

 その中国の生糸と日本の生糸はどれだけ違うのでしょうか。

 純国産の白生地を最後まで生産していたのは群馬と山形です。純国産の白生地を手に取って見て比べてみたことがありますが、確かに白生地を巻いてみると「サラサラ感」が違いました。しかし、容易に判別できる程度の物ではありませんし、素人には分からないでしょう。消費者は商品についたラベルや印を頼りに判断するしかないでしょう。

 今簡単に「純国産」と言う言葉を使いましたが、この「純国産」の意味を説明しなければなりません。そうしないと誤って判断する場合が出て来るからです。

つづく

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