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全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-83 得する街のゼミナール「きものの見分け方」(その4)

ゆうきくんの言いたい放題

「国産」「日本製」と良く言うのですが、その正確な意味、ここでは縮緬の白生地に関して説明しなければなりません。

 一般に「○○国製」と言うのはどのような基準で判断されるのでしょうか。

 食品の成分表示や原作国表示は大変厳しくなっているようです。使用されている化学物質、人工甘味料や着色料などは厳格に表示しなければなりません。また材料の原産国も表示されています。食品では複数の材料が使われている場合、「○○は日本製」「××は中国製」と表示されます。

 工業製品の場合は、そのような表示ではなく「○○国製」とか「××国製」と表示されます。工業製品も複数の素材、部品で作られているのですが、部品や原材料毎の表示はなされません。

 以前そのことを調べた時、国会でのやり取りがありました。それによれば、
「製品の最終生産国をその原産国とする。」
と言う決まりだそうです。

 つまり、パソコンやスマホなどは、それを最終的に組み立てた国がその原産国となります。中国で組み立てられたパソコンは、CPUが米国マイクロソフト社製であっても「中国製」となります。

 また日本の会社の販売品であっても、材料や部品がどこの国で作られたものであっても、インドネシアで最終的に製品とすればインドネシア製ということです。

 私が調べたのはだいぶ前で、国会でも問題になっていましたので今は変わっているかもしれませんが、原則的にはそのようだと思います。

さて、縮緬の白生地に話を戻します。縮緬の白生地を作る工程は次の通りです。

  • 養蚕 (繭を作る工程です)
  • 製糸 (糸を作る工程です)
  • 製織 (生地を織る工程です)
  • 精練 (糊を抜く工程です)

 蚕を飼って繭を生産する。その繭から生糸を引いて糸を作る。その糸で生地を織る。生糸にはセリシンと言う糊が付いていますので精練と言う工程で糊を落とします。縮緬を織る糸は撚糸と言う工程を経て強い撚りが掛けてあります。精練して糊を落とすと真っ白な生地となり、撚りを掛けられた糸は元に戻ろうとして縮緬の特徴であるシボ(表面の凸凹)ができます。

 さて、それでは白生地において「日本製」「国産」と言うのは何を意味するのでしょうか。

 先ほどの経済産業省の指針によれば、最終工程は「精練」になります。しかし、とても大事な工程であるとはいえ「糊を落とす」のが「○○国製」の判断とは違うような気がいたします。

 この様に「○○国製」とレッテルを張るのは大変難しいものがあります。他の工業製品と同じように考えた場合、着物の評価がおかしな方向に行ってしまうようにも思えます。

 呉服業界では、昔から独自の基準で品質表示を行ってきました。以下、白生地に関するこれまでの表示です。

[産地表示]

この場合の「産地」は国名ではなく、国内の産地の事です。国内の主な白生地産地は、

・長浜(滋賀県長浜市)   浜縮緬

・丹後(京都府丹後地方)  丹後縮緬

・五泉(新潟県五泉市)   五泉縮緬・羽二重

・小松(石川県小松市)   小松縮緬

 他にも福井県でも絹織物が生産されています。そして、それらの産地である証にそれぞれの組合で生地に証印しています。

 長浜は「丸に濱の字」、丹後は「丹の文字と繭型印」、五泉は「五泉の文字」、小松は「組合印」。福井県では坪金工業と言う会社が織っていて、「壺金のマーク」が押してあります。

長浜 (浜縮緬)
丹後 (丹後ちりめん)
五泉
小松
壺金 (福井)

つづく

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