明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-83 得する街のゼミナール「きものの見分け方」(その20)

ゆうきくんの言いたい放題

 捺染の「耳」は後から染められた物です。ローラーで柄の上から反物の両端に無地の「耳」を染めて行くのです。色は染められた柄と同じ色です。

 このようにして付けられた「耳」は、型染の物と比べるとやや太くなっています。そして、良く見ると「耳」の部分は下の柄が透けて見えます。色の濃い物はそう目立ちませんが、色の薄い江戸小紋ははっきりと見えます。これが見分けやすく型物と捺染との決定的な違いです。

 この「耳」は、仕立てれば縫い込まれて表には出ませんので、「耳」があろうとなかろうと関係ないのですが、捺染に「耳」を付けた江戸小紋は多数出回っています。
 我々見慣れている者にとっては、「耳」のない江戸小紋は不自然な感じがして「耳」が付いていた方が自然な感じはするのですが、それが悪用される場合があります。「耳」の付いた捺染の江戸小紋を型染だと偽って売っている例をよく聞きます。もちろん価格は型染並みにです。型染と捺染では価格が大きく違うのですが、消費者は目くらましを食らっていることが多々あるようです。

 私も経験があります。仕入れに行った時です。江戸小紋を仕入れようと商品を見せてもらいました。展示場には江戸小紋が山積みされています。山が二つありました。反物を開いて柄を見せてもらいます。

 一方の山は、「耳」のない江戸小紋でした。そして、もう一つの山は、「耳」のある江戸小紋でした。全て見せてもらった上で値段を尋ねました。「耳」のある江戸小紋は「耳」のない江戸小紋よりも15,000円程高く算盤を弾かれました。どちらも捺染の江戸小紋であることは一目瞭然でした。

「どうしてこちらが高いのか」
と尋ねると、
「はい、こちらは型で染めた江戸小紋です。」
と言う答えでした。

 その「耳」の部分には、はっきりと柄が透けて見えます。そこで、
「こちらが捺染の江戸小紋で、こちらが型染の江戸小紋ですか?」
と尋ねると、染屋の人間は、
「ええ、その通りです。」
と尤もらしく答えました。しばらく一つ一つの柄を見た後再び、
「こちらが捺染の江戸小紋で、こちらが型染の江戸小紋なのですね?」
と聞くと、
「ええ、そうです。」
と答えます。しばらくして、
「もう一度聞くけれど、こちらが捺染の江戸小紋で、こちらが型染の江小紋で間違いないですね?」
と聞くと、今度はややもたつきながら、
「ええ、そうです。」
と繰り返します。そして、
「しつこいようだけれども本当にこれは型で染めたものですか?」
そう聞くと、顔を曇らせながら、
「はい。」
そこで、 「これが型染だったら、どうしてこの耳の部分に下の柄が空けているのですか。」
そう聞くと染屋の人間は慌てて、
「えっ、分かるんですか。いいです、同じ値段にしますので。」
結局「耳」のある江戸小紋も「耳」のない江戸

小紋と同じ価格で仕入れた。

 しかし、呉服屋もばかにされたものである。

つづく

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