明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-83 得する街のゼミナール「きものの見分け方」(その18)

ゆうきくんの言いたい放題

 この違いは手造りと機械で造ったものの違いがあります。手造りについては私のHPでも再三ご説明したのですが、染物に限らず手造りの作品には手造りならではの誤差があります。その微妙な誤差が手造りの良さを感じさせてくれます。

 型染と捺染の江戸小紋を比べてみます。例えば万筋。万筋は非常に細かい線が縦に無数に並んでいます。型染の万筋は一寸巾に15~25本、微塵縞と呼ばれる万筋は一寸巾に31本の縞が染められています。

 これらは伊勢型と呼ばれる型で染められるわけですが、渋紙に31本の線を一寸巾に刻すわけですが、線と線の間隔を一様に、そして細い線を裁ち切らない様にするのは至難の業です。微塵縞と呼ばれる型を彫れるのは、人間国宝に指定された故児玉博氏でしょう。

 それらの職人によって線は真っ直ぐに彫られます。真っ直ぐでなければ線は裁ち切られてしまいます。しかし、その線は厳密に言えば真っ直ぐではありません。「厳密に言えば」と言うのは、「機械で彫られた線に比べれば」と言う意味です。

 児玉氏をはじめとして熟練職人によって彫られた線は、非の打ち所がないくらい真っ直ぐなのですが、機械の線に比べれば、ほんのわずかの誤差があります。その誤差とも言えないくらいの誤差が手造りの良さを感じさせてくれます。

 実際に二つの万筋を比べてみれば分かります。捺染の万筋はまっすぐで非常にきれいです。しかし、徐々に離れて見ると万筋の筋(線)は見えなくなり、次第に無地に見えてきます。黒の万筋であれば、離れるに従ってグレーの無地にしか見えなくなってしまいます。

人間国宝 児玉博 氏の毛萬筋

捺染の萬筋小紋

 印刷に「網掛け」と言う技術があります。色を薄くする時には細かい網を重ねて印刷すると色は薄くなります。薄くなると言うよりも薄く見えるのです。網の形など見えず薄い無地になるのです。捺染の万筋は、線の間隔が完璧に一様な為に「網掛け」と同じように色を薄くした無地の様に見えてしまいます。

しかし型染の場合、線の間隔に微妙な誤差がある為に、離れて見れば細い線は見えなくなりますが、何やら雲が掛ったような趣のある面を見せてくれます。

 他の江戸小紋も同じです。余りに整然と並んだ細かい点や柄は手造りの良さを感じさせてくれません。

 型染と捺染のこのような違いは、多くの江戸小紋を見ていると次第に分かってくるものです。しかし、現在皆さんはそれ程江戸小紋に接する機会もないでしょう。反物を見せられて説明されると、成る程とお分かりいただけるかも知れませんが、江戸小紋を見る機会が程多くはないと思いますので、直ぐには難しいかもしれません。しかし、型染と捺染の違いと言う事を頭に入れて見て頂ければ、次第に分かって来ると思います。

 これも型糸目の場合、糸目の違いを見るには目が必要ですが、もっと簡単な見分け方を紹介いたしました。これと同じように型染めの江戸小紋と捺染の江戸小紋の簡単な見分け方を紹介いたします。

つづく

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