明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-83 得する街のゼミナール「きものの見分け方」(その15)

ゆうきくんの言いたい放題

 型糸目は、型を使って糸目を入れる訳ですが、着物一枚分、すなわち身頃から袖、衽まで一枚の型で入れる訳ではありません。反物は13メートルあります。そのような大きな型はできませんし、それをプレスする機械もありません。糸目を入れる型は巾約40cm、長さ約70cmで、それを継いだり重ねたりして糸目を入れて行きます。

 型糸目を使うのは、安価に友禅を染める為です。最も合理的に型を使うために、一枚の着物に一つの型を何度か使う場合があります。また、ある振袖の為に作った型を他の振袖に流用する場合もあります。

 一番良くあるパターンは、袖の柄に同じ型を二度使います。通常、訪問着の場合、袖の柄は右袖の後ろ(外側)。左袖は前(内側)にあります。右袖の前、左袖の後ろには柄がありません。この二カ所の柄を同じ型で糸目を入れています。つまり同じ柄になります。これは一目で見分ける事ができます。

左右の袖柄が全く同じ

 両袖の柄が同じであれば、それは型糸目で染めたものです。手描きであれば、両袖の柄を同じにする必然性はありませんし、だいたい手描きで寸分違わない同じ柄など染められるはずもありません。両袖の柄が全く同じであれば、それは型糸目で染めた証左、手描きではない証左と言えます。

 同じ型で糸目を入れた柄でも挿し色を微妙に変えたり、型の一部を欠落させたり、また他の型の一部を足したりして巧妙に柄を変えたりしている場合もありますが、両柄の基本的な柄が完全に一致した場合、それは型糸目で染めたものと言えます。

下前柄 袖と同じ型を使い一部柄を欠落させている
袖柄 下前の型に柄を足している

 今「巧妙な」と言う言葉を使いましたが、これらの柄の操作は、決して染屋が消費者を騙そうとしている訳ではありません。できるだけ型糸目らしからぬ、手描きの味を出そうとして努力している証と捉えなければなりません。

 ここでもう一度誤解のないように申し上げるのですが、型糸目で染められた商品は、決して粗悪品ではありません。その出来は良質な手描きには及ばないと言うことですが、中には手描きと見紛う着物もあります。

 問題なのは、手描きよりも安価にできるはずの型糸目の着物が、あたかも手描きの様に、場合によっては高名な作家の手描き友禅として販売されている事です。手描きには及ばないけれども、それと思わせるような着物が安価で購入できるのはひとえに染屋さんの努力によるものです。消費者の皆さんが適正な価格で着物を購入する為に型糸目の特徴を知識として持っていただく事は有用な事と思います。

 そのような型糸目の染物にも昔とは違った事情が出てきているようです。

つづく

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