明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-83 得する街のゼミナール「きものの見分け方」(その23)

ゆうきくんの言いたい放題

 織物(紬や帯)を見る時に、視点の一つとして織物の組織である経糸緯糸があります。織物は経糸と緯糸で織られています。ごく単純な話ですが、着物を見分ける場合、この経糸緯糸がヒントとなる場合があります。そのヒントはいくつもあるのですが、例えば「糸の本数」と言うのもあります。

 「晒」と言う綿生地があります。浴衣の肩当や居敷当に使う事もありますが、腹に撒いたり、料理人が包丁を拭いたりするのにも使われます。最近は綿の価格も上がり、昔に比べれば高くはなりましたが、絹物よりはずっと安価な生地です。安価で余り注目されない生地ですが、実は晒にも良し悪しがあります。

 私の店で扱っているのは、知多木綿の晒で高級品です。高級品と言っても一反2,750円です。同じメーカーでもっと安い晒もあります。4段階位あるのですが、最も安い晒は1,500円程度でしょう。晒の高級品と低額品はどこが違うのでしょうか。

 私の店で扱っている晒は経糸数が750本。20番手と言う細い経糸を使っています。同じメーカーの低額品は経糸数が630本です。反物の幅は同じでも経糸の数と太さが違います。また高級品の緯糸は一寸巾に75本打ち込んでいますが、低額品は62本です。

 つまり、高級品は細い糸をきめ細かに織っていますが、低額品はやや粗く織られています。これは品質、手触りに関係します。

 以前、料理人の方が晒を買いにいらした事がありました。ある時、たまたま安い晒があったので、その晒をお目に掛けましたが、その方は「いや、そちらの方」と言って高級品を買って行かれました。聞けば、やはりきめの細かい晒の方が使いやすいと言う事でした。

 綿生地である「晒」を例にお話し致しましたが、絹物についても同じことが言えます。

 織物の着物の一つに「絣」があります。無地の紬の場合、経糸緯糸がどうなっているのか、どの位細いのかは分かりません。しかし、「絣」の場合ビジュアルに経糸緯糸を見る事ができます。

 絣の着物としては、綿では久留米絣、弓浜絣等があり、絹物では大島紬、結城紬はじめ多くの紬があります。これらの絣では、一般的により細かく緻密なものがより高価だと言えます。

 大島紬を例に取って見ます。今は大島紬の生産量も激減し、余り見なくなりましたが、昔は相当数の大島紬が織られ、問屋には山積みされていました。それらの大島紬は価格的に大きな開きがありました。

 当時大島紬ブームとも言われ、あちらこちらで大島紬の展示会が行われていました。展示会では、目玉の商品は数百万円の物もありましたし、百万円程度の物は珍しくはありませんでした。その一方で、二~三十万円の物もありましたが、「大島紬は高級(額)品」と言うイメージが付き纏っていました。

 その当時、「本場大島紬八万円」と言うデパートの広告を何度も見かけたことがありました。高級品のイメージがある大島紬ですから、八万円で買えるとなれば相当客が集まった事でしょう。

 しかし、この八万円の大島紬は紛れもなく「本場大島紬」ですが、他の大島紬とは別物で「横総」と呼ばれる物がほとんどだったようです。この「横総」と言うのは、横糸だけの絣で織られたものです。物にもよりますが、当時は十万円程度だったと思います。

 これらの大島紬の価格の差は次のような理由によるものです。

つづく

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