明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-83 得する街のゼミナール「きものの見分け方」(その12)

ゆうきくんの言いたい放題

 ここまでは証紙の話をしてきました。呉服の証紙はまだまだたくさんあると思いますが、代表的なものを説明してまいりました。

 証紙を理解できれば、その商品の素材や価値などを判断できる材料となります。しかし、証紙が表すものはその商品の極基本的な事にしか過ぎません。「きものの見分け方」と言う表題でお話ししている訳ですが、本当の着物の良し悪しは証紙だけで判断できるものではありません。

 皆さんが着物をお選びになる場合、その着物の素材や織り方、染め方、織屋や染屋だけで決める訳ではないでしょう。一番肝心なのは、柄であったり色であったりします。むしろその方が着物を選ぶ際に重要視するのではないでしょうか。

 そして一番の問題、それは私呉服屋から見ての問題なのですが、果たしてその着物がその価格に見合っているかどうかです。色や柄が気に入って買ったものが非常に稚拙な染物や織物だったりする。それを非常に高価で購入しているのを見かける事があります。

 本人が気に入った着物を購入する事は一向に構いません。しかし、それが商品価値に見合った価格で購入できるかどうかは、きものの見分け方に掛かっています。次に、その観点から「きものの見分け方」についてお話し致します。

 着物の価格は(帯も含めて)実にまちまちです。例えば訪問着は、十万円程度の物から数百万円の物まであります。これらを見分ける事ができなければ、自分の購入した訪問着が果たして価格に見合っているのかどうか疑わしくなってしまいます。

 何故そのように着物の値段は安い物から高い物まであるのでしょうか。

 着物の価格はそれを制作する手間と関りがあります。つまり多くの手間を要して創られた着物は高くなります。先ほどお話しした結城紬の場合を考えてみましょう。

 真綿から人の手によって糸を紡ぐ。一反分の糸を紡ぐのにどれだけ掛かるのでしょうか。そして、糸を括って絣を付けます。これも相当の手間です。その糸を整経して機に掛ける。そして、いざり機で横糸を一本一本通しながら織って行く。横糸一本通すごとに大きな筬を使って力いっぱいに打ち込んでゆく。一日にどれだけ織る事ができるのか分からない仕事です。

 これらの仕事を分業で行いますが、完成に要する延べ時間はどれだけでしょうか。現在の労働法規では時給1,000円を越える越えないの話がなされています。それから考えると完成までの人件費は一体いくらになるのでしょうか。結城紬が高価であるのが納得頂けると思います。

 昔、人件費はとても安い物でした。明治時代や江戸時代の事です。徒弟や丁稚は寝る所と食べる物を与えられて、今でいう給料らしい給料は無かったでしょう。紬を織る人は、それでお金を得ると言う感覚ではなかったかもしれません。家族の着物を織る為と言う人も多かったでしょう。

 昔は着物の価格に人件費が余り反映されなかったので今よりもずっと安価だったと思います。

 現在、手づくりの着物、100%手づくりの着物はとても高価です。訪問着の場合、100%手描きの友禅はとても高価です。そしてそれに加えて有名な友禅作家の描いたものはもっと高価になります。

 一方で何故安い訪問着があるのか。それは染織の技術革新によるものです。何とか着物を安価に作れないかと様々な技術が考案され安価な着物や帯が作られるようになりました。

 安価な着物や帯が作られるのは、呉服業界や着物を着る人にとって福音です。手描きの高価な訪問着を買えない人でも安価な訪問着を着る事ができます。手間を掛けた伝統的な結城紬を買えない人でも手軽に紬を着る事ができます。

 手描きの訪問着と新しい技術で染められた訪問着、伝統的な技法で織られた結城紬とそうでない紬では、やはり着物として帯としての良さが違います。しかし、その違いが読み切れなければ、安い訪問着を高値で買ってしまうという事もありますし、それは良く耳にする話です。

 そこでそれらはどこが違うのか、どうやって見分けられるのかについてお話し致します。ただし、全ての見分け方をお話しするには膨大な時間がかかりますし、私も全てを知っている訳ではありませんので、見分け方のコツと言いましょうか、いくつかの例をお話し致します。

つづく

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