明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-83 得する街のゼミナール「きものの見分け方」(その9)

ゆうきくんの言いたい放題

 西陣の帯は染色した絹糸で織られます。染色の染料は素材の表示には関係ないのですが、帯には染色された糸の他に金糸銀糸が使われます。多くの帯、特にフォーマルの帯には金糸銀糸が多く使われています。これらはもちろん絹ではないのですが、西陣では伝統的に「金糸銀糸は正絹とみなす」とされてきました。ですから金糸銀糸が使われた帯も「正絹」と言う表示が通っていました。

 しかし、国の品質表示の基準が厳しくなったために証紙からは「正絹」の文字が消えたものと思います。現在の証紙は、「西陣織」の文字と織屋番号、帯の種類が記載されています。

 さて、証紙から「正絹」の文字が消え、国の品質表示が厳しくなり、帯には証紙とは別の品質表示が求められる事になり現在西陣の帯には品質を表示したシールが貼られています。下記に二枚の例を示します。どちらも八寸名古屋帯に添付されたものです。

 左の帯には「絹100%」とあります。右の帯には「絹95% ポリエステル、レーヨン(金属糸風)5%」と書いてあります。

 左の帯は、紬のすくい帯です。カジュアルな帯で紬に締められるものです。右の帯はややフォーマルな帯で金糸銀糸が織り込まれています。この金糸銀糸と言うのは純金純銀ではなくポリエステル系の樹脂で作った物です。「金糸銀糸風」と表示されているのはこれを指しています。

 帯に織り込む糸に純金純銀を使うと非常に高価になりますので帯に使われている金糸銀糸は殆どがこのようなものです。このようなポリエステル系の糸は随分前から使われていますが、これも絹とみなして「正絹」の表示がなされていました。

 純金純銀の代わりにポリエステル系の金銀糸を使うのは、決して悪意でも何でもなく金銀糸の代用品として使われたわけです。元々帯の良し悪しを左右するのは、素材が全てではありません。どのように織られたのか、図案、配色など多岐に渉って帯の良し悪しを左右する要素があります。素材はその一つに過ぎませんし、良い帯を織ろうとする時には、決していい加減な素材は使わないものです。

 そこで私が心配していることがあります。上に示した品質表示を比べてみた時、消費者はどのように思うのでしょうか。

「絹100%」の表示を見れば、誰しも「混じりけのない絹100%の商品」と思うでしょう。しかし、「絹95% ポリエステル、レーヨン(金属糸風)5%」と言う表示は、「化学繊維の混じった織物」と言う印象を抱くかもしれません。

 後者の帯にはレーヨン糸が使われています。これは金属糸風、即ち金銀糸として使われています。この帯を構成するのになくてはならない素材です。しかし、品質表示だけを見た消費者は、帯の出来を見ずにそれだけで帯の良し悪しを判断するかもしれません。

 また、「絹」といっても様々であることは前にも申し上げました。本絹、絹紡糸、酢蚕糸、増量加工糸も同じ「絹」で表示されると、その品質の違いは分からなくなります。

 帯に使われている絹以外の糸は、レーヨン、ポリエステル、指定外繊維と表示されています。品質表示は法定の表示ですので誤りはありません。しかし、その意味するところを良く考える必要があると思います。

つづく

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