明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-83 得する街のゼミナール「きものの見分け方」(その6)

ゆうきくんの言いたい放題

 白生地の証紙について話してきましたが、もう一つ白生地を判断する材料があります。それは「量目」と言われる白生地一反の重さです。

 白生地の重さは織ってある糸の量によって左右されます。白生地の長さは決まっていますので、長さが同じであれば重さも同じと思われるかもしれませんが、糸の太さや打ち込みの違い(経糸緯糸の数)によって一反の重さが変わってきます。単純に考えれば、重い方が絹の量が多く、軽い反物は絹の量が少なくなります。

 昔の人(私の親世代)は、生地を触って
「この生地はしっかりしている。」
と言うように生地を評価していたものです。

「しっかりしている」というのは生地が厚い、即ち絹の量が多い、と言う判断でしょう。

 白生地は織り方によって厚い(重い)生地も薄い(軽い)生地も織る事ができます。昔は絹が今よりも貴重でしたので絹に対する感覚はデリケートでした。実際、昔は色々な白生地が織られていたようです。

 いろいろ、と言いますのは、今では製品として扱えない様な薄い(軽い)生地や質の良くない糸を使ったものなどです。それらは必ずしも悪意からではなく、庶民が絹の着物を着たいと言う願望に応えたものだったのだと思います。

 戦後の一時期には悪意を持ったまがい物も織られていたようです。父の話では、戦後の物のない時代には、反物の最初の部分だけを正絹で織った反物も出回っていたと言う事です。それらは完全に悪意に基いた犯罪ですので語るには値しないものですが、当時絹は大変貴重であったので、生地に対しては「しっかりしている」と言うような感覚が生まれたのではないかと思います。

 さて、白生地の量目は次の様に定められています。

通称 十反あたりの重量 一反の重さ(g)
カンロク 1貫600匁 600g
カンナナ 1貫700匁 637g
カンパチ 1貫800匁 675g
ニカン 2貫 750g
ニカンニヒャク 2貫200匁 825g

 白生地屋さんの間では白生地を「カンロク」「カンパチ」「ニカン」と呼んでいましたが(今もそう呼んでいるかは分かりません)、現代はメートル法の時代ですので、白生地にはグラムの表示がなされています。

 添付の画像は、丹後縮緬の量目印ですが「700g、13m」とあります。1反は約13m弱です。700gですから、カンパチとニカンの間になるのでしょう。しかし、最近はこの量目表示のない白生地が多いようです。何故量目の表示がされなくなったのかは分かりません。しかし、次のような事は言えると思います。

丹後の量目表示

浜の量目表示

 私の店で扱っている反物は、680gから750g位がほとんどです。それらは着物を仕立てるに当たって全く問題はありません。逆に着尺地表地でカンロク(600g)と言うのはほとんど見かけません。(襦袢地の場合は500~600g)

 現代は絹の価格が昔に比べれば遥かに安価で、白生地はそれそのものを消費者に売る訳ではなく友禅等の加工を施します。加工代の方が価格に締める割合は遥かに大きく、白生地代を節約しても価格にはそう大きな影響はありません。

 従って、わざわざ薄い生地を使う理由は無いのでしょう。そう言う意味では、余程おかしな商品やおかしなルートでの購入でなければ、生地の量目に関してはそれ程気にする必要はないと思います。

「生地がしっかりしている(生地が厚い)」とおっしゃる方は、生地を触って判断されます。触ってみて厚ぼったい生地を「しっかりしている」と判断されるのですが、生地の厚さは触ってみて正確に判断できないものです。

 縮緬生地には「鬼シボ」「二越」「一越」「綸子」など多くの種類があります。それは織り方であったりシボの大きさの違いを表しています。

 鬼縮緬は鶉縮緬とも呼ばれ、非常にシボが高く、風呂敷にも使われています。このシボが縮緬の特徴で、縮緬と言えば風呂敷の鬼縮緬の事と思っている方も多いようですが、一越縮緬や綸子も縮緬です。それらはシボが低いので触った感じは薄く感じられます。鬼縮緬を触ればとても厚く感じられますので、「しっかりしている」と感じるのでしょう

 白生地の量目については、一通り知識として持っておかれたら良ろしいかと思います。

つづく

来週12月31日は休ませて頂きます。

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