明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-83 得する街のゼミナール「きものの見分け方」(その21)

ゆうきくんの言いたい放題

 手描きでない染物を手描き友禅と称して販売する。つづれ織ではない織物をつづれ織と言って販売する。機械織の織物を手織りと言って販売する。それらは呉服業界において日常茶飯事に行われている様にも思えます。

 小売業者が消費者に商品を売り渡す場合、小売業者の無知成るが故に、または誤ってそのように販売する事もなくはないかもしれない。しかし、故意に悪意に詐称して売る例が後をたたない。いつの世もどんな業種でも消費者がその犠牲となるのであるが、呉服業界は特殊である。

 私は呉服店の店主である。呉服を商う事を生業としている。自ら誇れるほどの知識は無いが、それでも呉服のプロである。しかし、前回揚げた例の如く、メーカー(染屋)が呉服屋を騙そうとしているのである。

 呉服を売るプロであれば、染に関して染屋さんほどの深い知識は持ち合わせていないが、少なくとも手描き友禅と型糸目友禅の違いは分かるし、型染の江戸小紋と捺染の江戸小紋の違いは分かる。また、その程度の染の知識がなければ消費者に呉服を売るのは憚れる。

 しかし、卸の現場で染屋さんが仕入れに来た呉服屋さんに平気で捺染を型染と説明する。このことは今の呉服業界の現状を良く表しているように思える。

 現代の消費者の多くは生まれてからずっと着物に接する機会もなく着物の知識を得ることなく成人する。成人して着物に興味を持つ人も多くいるけれども、着物の本当の知識を得る機会もない。

 昔は親が教えたものだけれども、現代の親世代の方々も着物の正確な知識を身に付けている人は少ない。それでは着物を購入する呉服屋さんに教えてもらえばよいのだが、それもあてにならないようだ。

 私が染屋に捺染の江戸小紋を型物だと説明されたけれども、それは私に限った事ではないだろう。私がよほど見くびられたのかもしれないが、
「これが型染だったら、どうしてこの耳の部分に下の柄が空けているのですか。」
と言った時の染屋の慌て様は尋常ではなかった。そのような説明は普段に小売屋さんにしているのだろう。

 と言う事は、呉服屋が染屋に日常茶飯事に騙されているのかもしれない。裏を返せば、知識を持った呉服屋は希少なのかもしれない。

 呉服屋が捺染の江戸小紋と知らずに消費者に型染の江戸小紋と説明して販売しているケースが多々あるのが想像される。小売屋の無知が引き起こしたとしてもそれは許されないが、被害を被るのは消費者である。  「きものを見分ける目」は、そう言う意味でも大切である。数万円の捺染の江戸小紋を数十万円で買ってしまう危険性もあるのだから。

つづく

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