明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-83 得する街のゼミナール「きものの見分け方」(その16)

ゆうきくんの言いたい放題

 型糸目は型で糸目を一気に入れていく事でそれまでの様に手間を掛けて手で糸目を引くよりも遥かに簡単に友禅ができるようになりました。その為に安価に友禅ができるようになったのです。

 しかし、型で糸目を入れるには型が必要です。型を作らなければなりません。他の型染も一緒なのですが、作った型で大量に染める事によって染価を下げる事ができます。それ故に安く染める事ができるのです。

 型糸目の場合は先に申し上げました通り、同じ型を一枚の着物に複数回使う事もあります。また、他の柄の着物に使う事もあります。振袖は柄が多く複雑ですので、同じ型をあっちの振袖、こっちの振袖に使う事もあるようです。

 しかし、着物の消費が激減しています。昔は一度型を作ったら何枚もの同じ柄の着物をその型で染めていました。しかし、今染める着物の数が減っているので型を使う回数が減っているのです。

 型は使えば使うほど単価が下がります。もしも制作した型で着物一枚しか染めなかった場合、その着物はとても高い物になるでしょう。一枚であれば、型の制作代は全てその一枚の代金に含まれます。しかし、百枚製作すれば、型代はその百分の一になるのです。最近は、染める枚数が減っている為に型糸目の商品も昔ほど安価にはできなくなったとも聞きます。

 大分前の話ですが、京都に仕入れに行った際、展示会で訪問着がありました。とても凝った訪問着で手が掛かっています。糸目も綺麗で手描きとも思わせる作品でした。値段を聞くと結構な値段でした。しかし、良く見ると型糸目の訪問着でした。染屋さんに聞いてみました。
「この訪問着、型糸目ですよね。」
染屋さんは、ちょっと渋い顔をしましたが、
「ええ、型で染めています。」
「型糸目で随分いい値段だね。」
そう聞くと、
「いや、このくらいの物になりますと型の数もとても多いですし、それに数ができませんので・・・。」
確かに総柄の訪問着で同じ型を何回か使っているようだったが、それでも型の数は相当なものだと言うのは想像できた。そして、その位重い訪問着になれば、そうそう売れるものではない。

 同じ柄のその訪問着を百枚も染めれば安くなるのだろうけれども、百枚も売れない。そうすると染価も上がって来る。型糸目と言えども、昔ほど単価を下げられない事情もあるようだ。

 型糸目の技術も向上し、とても良い商品も染められている。しかし、手描きの糸目と型糸目では一線を画すものがある。それを感じるかどうかは個人の感性に委ねられるが、手描きとはどういうもの、型糸目とはどういうものなのかを知り、着物を見る目を肥やす事は昨今の着物小売事情において必要な物と思います。

つづく

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