明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-63 芸者(その4)

ゆうきくんの言いたい放題

 

 かつて明治時代の政府の重鎮の中には、芸者さんを妻にした人も多い。それは単なる情欲で妻にしたわけではなく、当時の一流の芸者さんは、政治家を支えるあらゆる知識と経験を持ち合わせていたのだろう。

 総理大臣である伊藤博文や原敬。井上馨、陸奥宗光、木戸孝允といった重鎮が芸者さんを妻としている。中には後妻となった人もいるが、いずれも夫の政治活動を裏で支えている。

 全ての芸者がそうではないだろうが、女性の教育機会のない当時としては、才能・技量のある女性が花開かせる数少ない場が花柳界だったのかもしれない。芸者に求められるものは、学校教育で教えられる以上のものであり、一流の芸者はそれらを身に付けているのである。

 芸者の話をしてきたが、こういう事を書くと、
「ゆうきくんはお大尽か」
とか
「ゆうきくんは良く遊んでいる」
と誤解されるかもしれないがそんなことはない。
 山形の宣伝をしておこう。先に書いた通り、山形は料亭文化、芸妓文化が残っている。私は芸者さんと飲むのは年に数回だけれども、高級なキャバレーに行くよりも遥かに安い。もしも山形にいらっしゃることがあれば何時でも紹介します。

 さて、芸者の着物についても書こう。

 芸者さんは売れっ子であればとにかく枚数が必要である。毎日同じきもの、同じ帯と言う訳には行かない。そして、座敷によってきものの重さも変える。そして、季節ごとに、また踊る演目毎にきものの柄を変える。そして、それらは袷、単衣、夏物にそれぞれ用意する。どの位のきものがあれば事足りるのだろう。

 枚数が必要なだけに、高価なきものは買えない。とは言っても安っぽいきものではいけない。私も芸者さんの事情に合わせようとするけれども中々難しい。

 芸者さんから注文を貰う事がある。それは、柄の指定であったり、色を指定したりするのだが、店の在庫にぴったりの商品がない場合がある。(ない場合の方が多い)その場合、それに合う商品を問屋さんに頼むことになる。

 きものの流通については以前書いたけれども、問屋に行って商品を買い取る場合と商品を借りる場合では値段が違う。買い取る場合は値切って買うけれども、借りる場合は問屋さんの言い値である。

 私の店では、売値を安くするために買取りが原則である。芸者さんの注文品も買い取りたいところだけれども、買い取って必ず気に入ってもらえるわけではない。気に入ってもらえなければ在庫として残ってします。そうかといって借りれば価格に響いて高くなってしまう。注文内容が細かいだけになかなか難しい。

 芸者さんは、座敷では訪問着か付下げを着る。それに合わせる帯は袋帯か名古屋帯である。訪問着の場合は袋帯が一般的ではあるが、芸者さんは重い名古屋帯を締める事が多い。座敷によって締め分けているようだ。

 帯の太鼓はメリハリを付ける為に厚い芯を入れて仕立てる。帯芯やさんに聞いたら、格別暑い帯芯があると言うのでそれを芸者さん用にとっておいた。針を通すのにも苦労するような厚い芯である。帯は背中に真四角にピンと太鼓を創る。

 しかし、そこまで厚いと締めるのに苦労するらしく、「もう少し薄く」と言われ、名古屋帯や袋帯用の芯を重ねて二枚使ったりして調整しながら工夫している。

                                  つづく

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