全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-65 きものと帯の合わせ方(その5)
では着物と帯にはどのような格があるのだろう。
着物の格の高い順に言えば(あくまでも一般的に)、留袖・振袖→訪問着→付下げ→小紋→紬→ウール・綿、と言う具合である。帯の場合は、丸帯→袋帯→織名古屋帯→染名古屋帯→半巾帯、となる。ただし、あくまでも一般的にである。
格の高い着物には格の高い帯、格の低い着物には格の低い帯という組み合わせをするので、留袖・振袖・訪問着には丸帯・袋帯を。附下・小紋・紬には名古屋帯、ウール・綿には半巾帯と言う事になりそうだけれども、必ずしもそうとは限らない。
着物の指南書やその付録と称して、「きもののTPO早見表」の類が良く見られる。着物と帯の組み合わせを一覧にして、「〇〇着物には××帯を」あるいは、「結婚式に出席する時には、着物は〇〇、帯は××」と言うような表が記されていたりする。余り着物を着ない人にとっては、とても便利で、安心して着物を着るための指南となっている。
しかし、着物と帯の組み合わせはそれほど単純ではない。
「訪問着には袋帯を」と言う指南があったとする。それを見た人は、「訪問着に袋帯を合わせれば良いのだ。」と解釈するだろう。しかし、訪問着と言っても様々あるし、袋帯と言っても様々ある。
例えば、結婚式に加賀友禅の訪問着を着て出席するのはほぼ正解である。(「ほぼ」と書いたのは、加賀友禅も最近は昔のそれとは違ったものが出ているのでひょっとしたら「合わない訪問着」もあるかもしれないと思うからである。)帯は袋帯を締めれば良いのかと言うと必ずしもそうではない。袋帯の中には紬の袋帯もある。西陣の袋帯でもカジュアルなものもある。訪問着に紬の袋帯ではまるで格が合わない。「訪問着に袋帯」と言う命題はなりたたない。
「紬には名古屋帯」と言う命題も同じである。「紬には名古屋帯を締める」これは正しい。しかし、名古屋帯は全て同じではない。フォーマル用もあれば、紬に締めるカジュアルな名古屋帯もある。付下げに締めるような名古屋帯を紬に締めたのではNGである。
「きもののTPO早見表」なるものは、そのような誤解をふんだんにはらんでいるので私は、着物を着慣れない人が間違った解釈をしはしないかと冷や冷やして見ている。
着物の形式(訪問着、小紋など)、帯の形式(袋帯、名古屋帯)は格を測る上で大方の目安となるのは間違いないが、画一ではない。フォーマルなのか、カジュアルなのかを考えなくてはならない。
そうなると、益々きものと帯の合わせ方は難しいと思われるかもしれない。しかし、着物や帯の形式以外の尺度を合わせて考えると、次第に分かって来る。
つづく