全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-66 呉服屋さん(その4)
ゆうきくんの言いたい放題
呉服屋は、きものや帯を売るだけが生業ではない。きものを着る人が快適にきものを着られるよう商品を揃え、相談に応じ、メンテナンスを行うのが呉服屋である。
持っているきものに合わせる帯を買いに来る人もいるかもしれない。襦袢が古くなったので新調しに来る人もいるだろう。また、裾が擦り切れて直しに持ってくる人もいる。汚れたりシミを付けてしまい、染抜きや丸洗いをする人もいる。
きものを着る人にどんな悩みがあっても、それを解決してくれるのが呉服屋である。私の店では、そのような需要には十分に応えているつもりである。しかし、そんな需要は、きものの需要の減少と共に少なくなっている。その分他で稼がなければ店はなりたたない。そんな訳で昔の呉服屋と店の姿容が変っているが、呉服屋の本質は今後とも守って行こうと思っている。
私が呉服屋をあと何年続けられるのか分からない。呉服の需要が激減して行く中で、「店を閉めるのも意外と近いのかな」と思う事もある。しかし、世の中にきものや帯を売るだけの店が増える中で、本当にきものを着る人達が頼りにできる店はそれ以上に激減している。そう思うと、「ひょっとして呉服屋はまだまだ続けて行けるのかもしれない」と思う時もある。
お客様から、
「結城屋さん、店を閉めないで続けてください。行くところが無くなりますから。」
という言葉を頂戴すると、ついそのような夢を見てしまうのである。