全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-69 棚卸
「棚卸」と聞いても、商売とは縁のない人にとってはピンとこないかもしれない。商売をしていれば、一年に一度必ず「棚卸」を行う。
会社組織で商売をしていれば一年に一度決算を迎える。一年の商売の文字通り「総決算」として会社の状態を正確に把握し所得を申告する。その際に必要なのが、その時点での在庫である。資産として在庫がどれだけあるかを調べなければならない。その仕事が「棚卸」である。
私の店の決算は7月である。7月末時点での在庫金額を調べなければならない。その為、通常7月31日に店を閉め、在庫商品を1点1点数える作業を行う。私が山形に帰って来てから約40年間、毎年棚卸をやっている。
店頭や仕舞ってある商品を全て数え、仕入れ値にして幾らになるのかを数える。点数が多いほど手間が掛かる。私の店では10万円以上の呉服物から、一個数十円の小物までもれなく数える。棚卸の日は営業を休み一日がかりで品勘定をする。
日頃他のお店に入り、商品の数が多いと、「棚卸は大変だろうな」と思ってしまう。以前、洋服を扱っていた事があったが、洋服屋(ブティック)はそれ程でもない。
私の従弟が文房具屋をしている。文房具屋は品数が多い。鉛筆だけでも数十種類。他にノートをはじめアイテム数で言えばどの位になるのだろう。数千点は下らないだろう。それらのバラになった商品を一つ一つ、紙は一枚一枚数えなければならない。従弟の文房具屋に行くたびに、「どうやって棚卸をするのだろう」と思う。
その店では二日がかりで棚卸を行う。しかも商品を納入しているメーカーの人が何人か手伝いに来ている。二日間黙々と商品の数を数えている。
まもなく7月31日を迎える。今年も棚卸をするが、昨年と同じ要領で同じような商品を数えていく。同じ事の繰り返しのようだけれども、40年前と比べれば内容も質も大きく変っている。それは呉服業界を映す鑑の様にも思える。
昨年と今年の棚卸は、質も量もそう変わらない。しかし、一年一年と経てゆくうちに、振り返れば30年前の棚卸とはおよそ違っている。良くも悪くも私の店の商売の足跡である。
つづく