全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-69 棚卸(その3)
黒留袖に劣らず色留袖も在庫が激減している。これも需要の減少がそのまま反映されている。
振袖は需要が減っているとはいえ、まだ在庫は必要十分に用意してある。振袖の場合は、年代が限られている。二十歳の振袖、四十歳の振袖、六十歳の振袖と言う範疇はない。全て振袖は若向きである。従って留袖の様に年代ごとの在庫は必要なく、色柄の好みに対応すれば十分である。
最近の振袖の柄は様々であり、全ての柄の好みを揃える事は難しい。私の店では昔からの振袖柄に拘っているので、私はそれで十分と思っている。現代の振袖を欲している方には適さないかもしれないが、私は現代風の振袖柄は取りそろえる気にはなれない。
訪問着、小紋、紬は昔に比べれば需要は減ったけれども、今でも呉服屋の主力商品である。お客様の希望にお応えできるだけの在庫は用意しているつもりである。とは言っても、昔に比べれば在庫数は減っている。それだけに慎重な仕入れが求められる。
昔は需要が多かったために、仕入れも今に比べれば大雑把だった。仕入れに行って気に入った商品があれば引き当てが無くても仕入れていた。それでも次々にいらっしゃるお客様に満足頂いて商品は回転していた。
帯も同様である。袋帯や名古屋帯も年代毎の在庫の管理とそれに伴う仕入れ。フォーマル、カジュアル、柄の種類などの管理も必要である。
今は、仕入れには昔以上に慎重になっている。
「在庫に無い年代層の商品はどれか。」
「どんな色目の訪問着がないのか。」
「柄は細かい物か大柄のものか。」等々。
それと共に価格にも慎重になっている。少ない枚数、即ち少ない予算で如何にして効率よく仕入れるのか。できるだけ安く仕入れる努力は惜しまない。
売上が減少し、在庫が減り、仕入れも減っているが、昔よりも緻密な在庫の管理でかえって在庫の質が上がっているかもしれない。
一方で全国的には、仕入れをせず在庫を持たない展示会商法が今でも盛んである。商品に対して呉服屋が責任を持たずに問屋から送られた商品を並べ、問屋の付けた価格で商売をする。会場には商品が山積みされる。柄も価格もその呉服屋の目のフィルターを通したものではない。
私のお店にいらっしゃるお客様には、それ程多くの商品をお目に掛ける事は出来ない。しかし、お客様には次の様に申し上げている。
「きものを展示会で100枚の中から選ぶよりも、私の店で3枚ご覧になった方が良いきものに出会えますよ。」
ほとんどのお客様が納得して買って行かれる。お客様商品買っていただく本当の意味が今の呉服業界に欠けている。
つづく