全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-69 棚卸(その4)
さて、棚卸で反物や帯を勘定するのにそう時間はかからない。金額も大きいので、反物や帯は在庫金額の半分以上を占めるけれども勘定に要する時間は少ない。それだけであれば一時間程度で数えられる。
問題はその他の商品である。最近は呉服以外の商品も増えて来た。いわゆる小物である。小物には和装小物とその他の雑貨品がある。和装小物は草履や帯締、帯揚。また和装下着や足袋、伊達締から腰紐まで、きものを着る場合に必要な小物である。
和装小物も昔に比べれば数は減ったが、アイテム数は変わらない。きものを着る人が減少しようとも、きものを着る為に必要な小物は昔から変わらないからである。呉服屋である限り、お客様がきものを着る時に要する和装小物は全て揃えておかなければならない。
喪装用の黒草履であれば、サイズはSからM,L,LLまで。黒の帯締、帯揚も夏物、冬物を揃えている。そして、喪装用の小物に限って言えば、商品を吟味するお客様の為の高級なものから安価なものまでそろえておかなければならない。弔事の為に山形にやって来られた方が、
「草履(帯締、帯揚)を忘れてきちゃって、安いのはありませんか。」
と言って時折来店される。高価な草履や帯締、帯揚をお目に掛けても、
「良い物は家に有るので、ほんの間に合わせで良いのよ。」
とおっしゃるケースが多い。お客様にしてみれば、呉服屋を頼りに来店されるのだから、やはりそれに応えられるようにしていなければならない。
留袖用の白の帯締、帯揚も需要は昔に比べれば激減したとは言え、在庫から外すわけにもいかない。夏物の白の帯締や帯揚も揃えている。さすがに夏物の白の帯締や帯揚を求めにやって来られるお客様は一年に一人いらっしゃるかどうかだなので、在庫はそれぞれ1本ずつになってしまったが、それでも外すわけには行かない。
そういう訳で、和装小物の在庫アイテム数はなかなか減らないし、減らすわけにもいかない。在庫数は減っても数える手間はそう変わらない。
小物でも和装小物以外、すなわち雑貨品は昔に比べて格段に増えている。
昔は呉服物を扱っていれば商いが出来ていたが、近年呉服の需要が減ると、相対的に雑貨類の販売にも力が入って来る。
雑貨とは着物を着るのに直接は関係のない小物として私の店では分類している。
具体的には、風呂敷や手拭い、ハンカチ、扇子、バック類等。それらはまだ和装と全く無関係ではないが、場所柄観光客も多いので、山形の産物、紅花染めの小物や山形の陶器、そして山形のスリッパも扱っている。また、京都のお香も扱っている。いずれも「和」を基調とした雑貨ではあるが、そのアイテム数、金額は増えている。
これらの雑貨品の棚卸には多くの時間を要する。これも時代の流れである。
そして、最も気を遣い、時間を要するのが付属品である。
つづく