明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-69 棚卸(その5)

ゆうきくんの言いたい放題

「付属品」とは、きものを仕立てる際に必要とされるものとして私の店では分類している。胴裏や八掛地がそれにあたる。八掛地の在庫数は昔(50年前)に比べて三分の一程度になった。それでも在庫は数十枚ある。

 八掛地は小紋や紬、附下などの八掛の付いていないきものを袷で仕立てる際に表地の色に合わせてお客様に選んでいただく。お客様の好みがあるので通常5~6枚の八掛地をお目に掛けて選んでいただく。同じピンク系であっても微妙な彩度や明度によって仕立上がったきものの印象は随分変わってしまうので同じ系統の色を複数揃えておかなければならない。

 以前は、裏地屋さんが出張でやって来て八掛地を2箱(2~300枚?)持って来て商売をしていた。店の在庫と突き合わせて抜けた色の八掛を仕入れていた。裏地屋さんが持ってくる八掛地は無作為に染められた物で、一枚一枚、その時々によって色が異なる。その中から微妙な色の違いを見ては仕入れていた。

 しかし、今は裏地屋さんもやって来ないし、無作為に染める染屋もない。数社のカタログの中から色を指定して仕入れている。言わば昔はアナログ的に色を選べたが、今はデジタル的にしか色を選べない。

 更に問屋さんに聞くと、八掛を在庫している店はそう多くはないと言う。小紋や紬に八掛を合わせる場合には実際に小紋と八掛地を合わせて見ないとピンとこないのだが、多くの店ではカタログの小さな見本で済ませていると言う。数多く在庫しなければならない八掛地がいらなくなるのであれば、財務的に楽にはなる。しかし、お客様にご満足いただくにはどうかと思う。

 八掛地は、製品になった八掛地を数えて行くだけなのでそう手間は掛からない。しかし、胴裏は複雑である。

 絹物の反物は通常三丈物(12m~13m)である。袷のきものは裏を付けるが、裏の1/3は八掛地、2/3は胴裏地である。従って胴裏地は約8mある。

 胴裏地は製品として箱に入った物もあり、その場合は一枚〇〇円として数える事ができる。しかし、実際はそう言った胴裏は少ない。胴裏地は羽二重地である。胴裏用の羽二重地は、一巾物と広幅物がある。一巾物の巾は反物と同じく約40cmである。広幅物は倍巾とも呼ばれ、幅は約80cm。その広幅の胴裏地は46mで購入する。通常これを裁って12枚分の胴裏に使う。しかし実際には、単衣のきものの裏襟に使ったり、衣敷に使ったりするので、いわば切り売りして使っている。

 従ってこのような胴裏の棚卸をする場合、残っている生地を測って在庫量を出している。羽二重の胴裏地に限らず、切り売りする物はいちいち残布の長さを測らなければならない。

 きものの付属品と言えば、今はあまり使わなくなったものもある。しかし、いつ消費者が求めにやって来られるか分からないので在庫をしている。例えば次のようなものである。
  黒八・・・男物の袖口や丹前・半天の衿に使う
  別珍衿・・・綿入れ半天の衿に使う
  キュプラ裏衿・・・ウールや綿反、化繊の裏衿に使う
  麻裏衿・・・上布や小千谷の裏衿に使う
  紗衣敷・・・単衣や夏物の衣敷
  麻衣敷・・・上布や小千谷の衣敷
他にもまだあるが、これらは最近売れるのは稀になってしまったけれども、呉服屋としては欠品するわけには行かない。

                                       つづく

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