全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-71 呉服屋はもうないのか(その2)
きものを着るには、主役の着物、帯、襦袢の他に様々な付属品が必要である。帯締め、帯揚、腰紐、伊達締め、下着、帯板、帯枕、場合によってはコーリンベルトや衿芯など。足袋や草履も必需品である。そして、必要に応じてかんざしや帯留といった付属品である。半衿や伊達衿、場合によって必要とする付属品も違ってくるが、必要とする付属品全てが揃わなくてはきものを着る事ができない。それらの付属品は何処で売っているのか、何処で手に入るのか。それは呉服店である。いや、呉服店であるべきである。
きものを着ようとして足りない物があったとすれば、その人は真っ先に呉服店に掛けこむはずである。しかし、呉服屋に行けば本当にその商品が手に入るかどうかが分からなければ前もって問い合わせる事になるのだろう。
最近呉服店は、振袖に特化する店や展示会で販売する店など、効率の良い商売が目に付く。何時買いに来るか分からない商品を揃えるよりも、売り先や売る物を絞って商売をする為に、販売する時しか商品が揃わない。常時必要な付属品は扱わない。そう言った呉服屋が増えている。
魚屋で言えば、マグロや鯛は置いているが、イワシやサバは置いていない。肉屋で言えば、高級霜降牛は置いているが、安い赤身は置いていない。そんな商売かも知れない。
魚屋さんにいちいち電話をして、
「そちらでイカは扱っていますか。」とか、
「タコの刺身はありますか。」
と尋ねる人はいないだろう。
本来呉服店で当然扱っているはずの商品が呉服店の店頭に無ければ、消費者は一つ一つインターネットで探して購入するのだろう。
消費者が必要とする呉服用品を扱わなくなった時、呉服屋は呉服屋ではなくなる。さしずめ「振袖屋さん」「イベント屋さん」と言ったところだろう。
呉服業界が消費者にきものの需要を本当に促そうとするのであれば、消費者が呉服屋をより身近に感じ、気軽に買い物相談できる環境を維持しなければならないと思う。