全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-73 最強のアナログ・・「きもの」(その2)
私がインターネットを利用し始めたのは2000年直前。インターネットが普及し始めた時である。当時の環境は今に比べれば稚拙なもので、PCもディスプレイはブラウン管。CPUのクロックは1ギガに満たなかった。ブロードバンドと言う言葉も聞こえ始めた頃で、通信速度も今に比べれば遥かに遅い。
しかし、それでもインターネットは画期的なものだった。ホームページの作成ソフトも今の様に出来合いの物はない。そうかと言って、ソフト会社にホームページの作成を依頼すればとても高かった。ちょっとしたホームページでも30万円位だったと思う。
海とも山とも分からない物にそんなに投資できないと、私は自分で作成した。
プログラム作成の本を買って来て作ってみたが、やはりプロのデザインとは違う素人っぽいホームページが出来上がった。その時に「全日本きもの研究会」として着物のの情報を流すと共に、販売のページも作成した。
着物や帯、小物の写真を撮ってホームページに揚げて行く。写真を撮るのも本を見ながら照明にも気を遣ったが、やはりプロの出来とは違った。
そして、何とかホームページができたけれども、ここで問題になったのは決済方法である。代金を先に振り込んでもらう、代金引換で商品を送る、と言った方法があるが、お客様は果たしてそのような面倒な方法で買っていただけるのかが心配だった。
それにも増して心配だったのは、呉服のお客様が、このような方法(インターネット)で買物をするのかどうかだった。
当時既にあらゆる業界で少しずつではあるが、インターネットによる販売が行われていた。しかし、扱われている商品は、比較的単価が安く商品が特定できるものだった。品番が特定できる日用品や衣料品はその類だけれども、高額で一品一品商品の違う呉服の様な商品はまだそれ程出回ってはいなかった。
私が一生懸命に商品の写真を撮っているのを見て、父は
「そんなので着物が売れるわけがない。」
と言っていた。父や年配(その当時の)の呉服屋は一様にそう思っていたし、私も半ばそう思っていた。着物は「見て、触って、着て見て初めて買っていただける。」と言うのは呉服業界では常識だった。
「PCの画面上で見た10万円以上もする着物や帯を注文する人がいるのか。」
それはホームページを作成する私にずっと付きまとっていた。
「正確な色を伝えられない」と言うのも心配の種だった。商品の写真を撮る際に、電球色や撮影環境に気を配っても、PCに現れるのは真色とは違っている。画像ソフトで修正して真色に近づけるのだけれども、他のPCでみれば同じ色に見えるとは限らない。
色は着物にとって命である。少々の地味派手の違いがお客様の好みに微妙に関わってくる。
「果たしてこんなもの(インターネット)で呉服が売れるのか。」
と言う気持ちは益々大きくなっていた。
つづく