全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-75 大雪・きもの(その2)
明治以後になると、それ以前にはなかった着物の素材が出て来た。筆頭に挙げられるのはウールである。それまでは、麻、絹、綿が主流であったが、明治に入り外国から羊毛(ウール)が入り国内でも生産されるようになった。
ウールの利点としては、断熱性があり暖かく、また水濡れにも鷹揚で、汚れに対してもブラッシングして汚れを除去できる。欠点としては洗うと縮む、虫やカビが付きやすいが、それまでの絹や綿とは全く違ったものだった。
着物の素材としてウールが用いられ、ネルやセル、メリンスと言ったバリエーションが生まれ、特にメリンスは唐縮緬と呼ばれ、襦袢地や布団生地にも用いられ多用された。
その後、ウールの断熱性、耐水性が冬のコートの素材として今日も用いられている。
ウールコートは、形もロングからケープまで、襟の形もヘチマ衿、ロールカラーからノーカラーまであり種類も豊富である。素材もカシミヤ、アンゴラ、アルパカと言った高級素材でも作られている。ウールコートは、寒い地方、特に雪国では最良のコートと思われる。
明治以後に作られた着物の素材では化繊がある。こちらは明治以後と言うよりも昭和以後である。キュプラ、ナイロン、ポリエステル、レーヨンと言った化学繊維が多く発明され、今日でもテンセルなど新しい素材が作られている。
化繊の冬コートの代表としてはベルベットコートがある。ベルベットはLoop織や二重織によって起毛されたもので、元々は絹で織られていた。しかし、絹のベルベット(ビロード)は高価で外衣にするのは適さないので、現在主にレーヨン、キュプラで織られたものが多く流通している。
ベルベットは水濡れに弱い性質があるので、レインコートの様に雨の中で着るには適さないかもしれないが、寒い雪の時には、付着した雪を密集した毛が弾き、または容易に払いやすくベルベット地本体は濡れない事からコート地として用いられている。
暖かく見た目も豪華なので、ウールコートと並んで今は冬のコートの代表格でもある。
コートと共に冬の装いで気を遣うのが履物である。積った雪の中、また溶けかかったびしょびしょになった道を歩くのに足元は気になる所である。
きものの履物と言えば草履と下駄がある。それぞれの雪用と言えば、雪草履と裄下駄がある。
雪草履は褄がついた草履である。雨草履も褄がついているが、その違いは防寒性と底の防滑性である。雪草履は比較的頑丈に造られており、そこ生ゴムなど滑りにくい素材が使われている。実際には、雪草履、雨草履の区別なく履かれているようだ。
褄の付いた防寒性の高い草履には雪草履と他に防寒草履がある。見た目は同じようだけれども、防寒を目的とした草履の中には耐水性に劣るものがある。防寒草履は東京など雪の降らない地方で履かれている。草履の問屋さんがやって来て、防寒草履を勧められるけれども、山形では雪が降るので防寒草履は売れない。防寒草履はビロードで造ったものなど、見た目に暖かそうだけれども雪国には不適である。
つづく