全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-83 得する街のゼミナール「きものの見分け方」
先日、山形市商店街連合会で、「得する街のゼミナール」が行われました。商店街活性化の為、商工会議所が主催したもので、各商店の人が講師となって専門知識やプロのコツを無料で消費者に教える企画です。
お店によって「布団の直し方」「お仏壇の修復」「生活の中に活かす漢方薬」など、それぞれの店の専門に応じて講座を開きます。私の店でも参加して、「きものの見分け方」と題して行いました。
今回は、その時話した内容です。
今日は、「きものの見分け方」についてお話しいたします。
「きものの見分け方」と言いますと、
「これはどのような着物か」
「これはどのような帯か」
「値打ちがあるものか」
等と、云わば着物鑑定と思われるかもしれません。
消費者からは、よく「きものの価値が分からない」と言う声を聞きます。きものの鑑定ができればそのような悩みは無くなると思うのですが、きものの鑑定ができるようになるのは大層な事です。全てのきものの鑑定ができるようになるには相当の勉強と時間が必要かと思います。私もこの世界に入ってから40年になりますが、とても「私はきものの鑑定ができます」とは言えません。余程の専門家、研究者でなければ着物の鑑定はできないと思います。
皆さん消費者の立場に立てば、「きものの見分け方」と言うのは、
「このきものはいくらぐらいするのだろう」
と言う疑問に重なると思います。
呉服店その他できものを見て、
「この着物はどうして高いのかしら」
また、
「このきものは、あのきものと同じように見えるけれども、どうして安いのかしら」
と思われた事はないでしょうか。
消費者の心の中には、
「きものの事が良く分からないので、自分が買ったきものが一体どれほどのものなのかが分からない」
と言う事があるのだろうと思います。きものの知識、きものの見分け方が分からない為に、きものを買っても、それがどれほどのものか分からないと言う事でしょう。
今日は皆さんをきものの鑑定士にはできませんが、ある程度のきものの見方、(これが大切です)が分かるように指南させていただきます。
皆さんが、きものを見分ける時に、その一つの要素一つの根拠として「価格」があります。10万円の小紋と20万円の小紋があれば誰しも20万円の小紋の方が良い物と思われるでしょう。柄の好みは別として、「10万円の小紋よりも20万円の小紋の方が小紋として、染物として良い物だ。」と言う判断は、一応当たっています。
価値が物の価格に反映する、と言うのは着物に限った事ではありません。一般に流通の世界では、「価格の高い物が価値の高い物」と言う不文律は成立ちます。ただし、価値とは何かと言う事になると話が複雑になります。衣料品であれば、素材、染色、織り方またデザイン等、付加価値の総体としての価値ですので中には、ある人は価値があるという。またある人はそれ程のものではない、と言う事が出てきます。それらは流通業界では売上、売れ行きに関わってきますので自然に淘汰されるのが普通です。
従って、本人の冷静な判断があれば、安い物よりも高い物の方が価値のある物、良い物であるという判断は、あながち間違いではありません。
しかし乍ら、このような話をしましたのは、呉服業界ではそれに違う事が往々にしてあります。もっと分かり易く言えば、「呉服業界では、価格は着物を見分ける尺度とはならない」事が往々にして有るのです。このことを頭に入れて頂かなければ、これからお話しする「きものの見分け方」がかえって仇になる事がありますので、まずこの事を説明いたします。
つづく