明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-83 得する街のゼミナール「きものの見分け方」(その11)

ゆうきくんの言いたい放題

 さて、私共呉服屋がお客様に「本場結城」と言う言葉を使って説明するのですが、この「本場結城」と言う言葉の定義が曖昧です。いや、本当は決まっているのかもしれませんが、呉服を売る現場では定義されていないように思えます。

「本場結城紬卸商協同組合」では、その組合で織られている結城紬を「本場結城紬」としているようです。従って「茨城県結城郡織物協同組合」の製品は「本場結城紬」ではないと言う事になります。

 私はお客様に説明する際には狭い意味で「重要無形文化財指定技法品」を「本場結城紬」と言う場合が多いです。それは、お客様に説明する際に「これは結城紬の重要無形文化財指定技法品です。」と言いにくい事もありますが、「本場結城紬」と言うのは非常に高価であることはある程消費者も分かっています。そこで「本場結城紬卸商協同組合」の商品を「本場結城紬」、そして「茨城県結城郡織物協同組合商品は本場結城紬ではありません。」と説明してしまうと誤解を生じる恐れがあるからです。

 そのような説明をすると、「本場結城紬卸商協同組合」の商品は全て「茨城県結城郡織物協同組合」よりも高価であると思われるかもしれません。しかし、両組合ともいろいろな商品を作っていますので商品の良し悪しは実際に見て判断していただきたいと思うのです。

 三番目も似たような証紙ですが、こちらには「古代結城織物振興会」と記載されています。この証紙は、古い紬によく見られるのですが、私は「古代結城織物振興会」と言うのが何なのか分かりません。既に解散した組織かも知れません。少なくとも上記二組合の物とは違います。

 他にもこれらと似た証紙をよく見かけます。それらの織物の良し悪しは別として、ある意味「結城紬」とは上記二組合、そしてその証紙の違いは左の「結」と「紬」であることを覚えておいてください。それ以外の証紙には「紬」の字がほとんどです。「紬」の証紙であったら、それが「茨城県結城郡織物協同組合」の物かどうかを確認したらよいでしょう。

 結城紬の証紙には他にも、地機か高機か、平織か縮織か、真綿手紡ぎ糸かどうかなどの情報が記載してあります。もっと知りたい方は調べてみてください。

 結城紬の証紙は様々、中には偽物もあるようで非常に複雑ですので良く注意する事が必要です。特に高価な結城紬を購入する場合には、信用できる呉服屋さんで十分に説明していただき納得した上で購入する事をお勧めいたします。

 結城紬には「結」印の「本場結城紬卸商協同組合」と「紬」印の「茨城県結城郡織物協同組合」の物があるとお話し致しました。そしてその他に似たような証紙を付けたものがある事もお話し致しましたが、実は他にも証紙は全く違っていますが、ラベルに「〇〇結城」と冠した紬も多数出回っております。これらを含めて「本場結城紬卸商協同組合」と「茨城県結城郡織物協同組合」以外の紬は結城紬でも何でもなく紛い品であるとの印象を与えてしまったかも知れませんが、必ずしもそうではありません。

 初めから騙そうと思って質の悪い紬に結城紬と似たような証紙を貼った物もあります。しかし、そうではなく「結城紬風の」と言う意味で「〇〇結城」とした商品もあります。これらは、結城紬の優れた製法を見習って作られたもので、質は違っても決して紛い物とは言えません。

十日町で織られた結城風の紬

「越後結城」「越後大島」と言う紬があります。これらは新潟県十日町で織られた紬です。証紙は結城紬とは全く違います。黄八丈を真似た「〇〇八丈」と言う織物も米沢をはじめとして織られています。いずれもその出自、生産地を明らかにし、オリジナルの証紙を貼っています。 「結城」「大島」「八丈」の名を冠して騙そうと言う意図は感じられません。それらは本物の結城紬、大島紬、黄八丈とは区別して評価すべきと思います。ただし、その名を利用して本来の価値とはかけ離れた価格で売られた場合は問題かと思いますが。

つづく

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