明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-74 和裁士

ゆうきくんの言いたい放題

 年々需要が減り、生産量も減少している呉服業界だが、コロナのお陰でこの二年間でまた減少が進んだように思える。「コロナが明ければ」と一縷の望みを抱いているけれども、そのコロナはいったい何時終息するのか。そして、果たして元通りきものを着る人は戻って来てくれるのだろうか、と最近思う。

 どんな生業であれ、自分が一生懸命に働いているうちは仕事を続けられると思っているし、そう願っている。しかし、これだけ呉服業界が細って来ると、何時まで店を開いていられるのかと思えて来る。

「商品がない。(織屋染屋が次々に店をたたむ)」「きものを着る人がいない。」「きものを買う人がいない。」等等、危機は様々あるけれども、私にとって店を畳まなくてはならない理由の最も近いのは「和裁士」である。和裁士がいなくなることで私は店を畳まざるを得なくなるのではないかと言うように思えて来た。

 呉服屋は、商品を仕入れ、それをお客様に買っていただき、仕立をして納めて生業が成り立つ。その過程は細かく言えば数十もの要素で成り立っている。そのどれか一つでも欠ければ呉服屋の生業は成り立たない。

 商品と言っても着物の反物や帯地があれば良い訳ではなく、仕立てる為には目立たない付属品が伴う。胴裏や八掛、半衿や伊達衿、男物では袖口布等。帯の場合は帯芯。帯芯は厚さの異なる袋帯用や名古屋帯用、芸者さんが用いる特厚の物などもそろえておかなくてはならない。きものを着る段になれば、伊達締、腰紐をはじめ足袋、草履、帯締、帯揚等の小物も必要である。

 それらを店に揃えたところで、きものを着る人、お客様がいらっしゃらなければ商売は成り立たない。そして、きものは仕立てなくては着る事ができない。

 着物や帯、小物はその数、種類が減っているが、まだまだなくなりそうもない。きものを着る人も減ってはいるが、皆無と言うことにはなりそうもない。その中で巧く泳ぎ渡れば呉服屋は続けられそうだけれども、和裁士が最初に居なくなりそうである。

 和裁士は熟練仕事である。昔、日本の女性は皆針仕事をさせられた。若い女性は、嫁入り道具の一つとして和裁、洋裁を習っていた。私が子供の頃は、着物や洋服が破れれば母が繕っていた。膝や肘に穴が空けば接ぎ当てをしていた。今は修理屋さんもあるが、昔は全て家で行っていた。

 和裁は、それを教える人がいて近所の若い女性が習っていた。中には、大所帯の和裁学校とも言える縫製所があった。中学や高校を卒業した人がそこで修業をしていた。まさに徒弟制の熟練和裁士の養成所だった。 私の店でもそう言ったところで修業をした人達が長年仕立てをしてくれている。和裁歴は40年50年と言った人達である

                                          つづく

着物のことならなんでもお問い合わせください。

line

TEL.023-623-0466

営業時間/10:00~19:00 定休日/第2、第4木曜日

メールでのお問い合わせはこちら