全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-74 和裁士(その5)
ゆうきくんの言いたい放題
そういう意味で私は日本の熟練和裁士を大切にしたいと思う。しかし、その和裁士は現役の数が減っているうえに高年齢化している。
私の店の和裁士はもう七十歳を超えている。そして、引退する人も増えている。
引退の理由は、ご主人の定年がきっかけだったり、生活に困っているわけではないので「この辺で・・・。」と言う人もいる。まだまだ仕立てができるのにもったいないと思うのだが、個人の事情にまでは踏み込めない。
若い人はどうかと言うと、いないわけではないのだろうけれども以前の和裁士と感覚が違ってきている。生活が豊かになっているせいもあるのだろう。
現役の人達はと言うと、歳とともに仕立てのペースが遅くなってくる。目が衰えてくるので黒物は敬遠される等、致し方ないが徐々に仕立てられる数が減っている。
呉服の需要は間違いなく急減しているが、それに伴って仕立ての質が落ちても良いと言う事では全くない。どんなに呉服の需要が細ろうとも、間違いのない仕立ての技は保持しなければならない。
和裁士を大切にしながら商売を続けたいと思うけれども、十分な技術を持った若い和裁士を補充できるのか。もしも、それができない場合は、和裁士はいなくなってしまう。
仕立が出来なければ呉服屋は成り立たない。そうかといって仕方なく海外仕立に頼るのか。しかし、海外仕立も韓国大島と同じように将来(近い将来かも知れない)なくなる運命だろう。
和裁士がいなくなった時、呉服はなくなる。私が店を閉めるのは、商品が手に入らなくなったり、着物を着る人がいなくなったりする前に、和裁士がいなくなった時、と言うのが最も現実的のようである。