明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-74 和裁士(その4)

ゆうきくんの言いたい放題

 3~40年ほど前、韓国大島が出回った時期があった。当時は大島紬が流行していた時期で、大島紬の組合も全国的にキャンペーンを行っていた。大島紬はとても高価で、九マルキの工芸大島は数百万円で売られていた。

 そんな中にあって、韓国で生産された大島紬が相当に出回っていた。メリットは安さである。当時まだ発展途上だった韓国の賃金は日本に比べて非常に安く、本場大島紬に比べれば格段に安く生産できた。

 その出来は、と言えば私はよくわからない。韓国大島に触れる(売る)機会が少なく、その全体像は掴めなかった。
「韓国大島か・・・。」と揶揄する声も聞こえていたが、細部にこだわらなければ、そこそこ大島紬と思える織物ができていたことは確かである。

 しかし、現在は全くお目にかからない。韓国で大島紬など今は織られていないだろう。

 その第一の原因は、日本国内での着物の需要の激減。それと大島紬の組合があまりにも強引なキャンペーンを張ったために顧客が逃げていったとも私は分析している。ちなみに本場大島紬織物協同組合、本場奄美大島協同組合は現在昔の勢いは全く無くなっている。もはや韓国でも他の国でもわざわざ大島紬を生産しようとは思わないだろう。

 そして、もう一つの原因は、韓国の賃金レベルが上昇して、とても採算が採れない。当時は賃金の差が大きかった為に韓国でも割の合う商売だったが、今日韓国の経済は成長し、名目では日本よりも平均賃金が高いとも言われている。

 さて、韓国大島の教訓を考えると、東南アジアの諸国が着物の仕立てをいつまで続けられるのだろうか。日本経済が足踏みをしている間に、中国をはじめ東南アジア諸国の経済は間違いなく発展し、徐々にではあるが日本に迫ってきている。

 拠点とした国の賃金レベルが上がれば、拠点を変えて行く。そういったことがここ2~30年行われている。海外生産の雄と言えるユニクロは、中国から東南アジアへ、そしてマダガスカルまで行っている。

 着物の仕立ての場合、マダガスカルと言う事もないように思えるが、東南アジアでは追い詰められてきている。ミャンマーが最後の秘境と言われているが、政情が不安でカントリーリスクが大きすぎる。

 果たして20年もすると、着物の仕立てをしてくれる国はなくなってしまうのではないかと思う。そして、もう一つ思うのは、日本の文化を支える根幹の一つを海外に頼って良いのだろうかと言う不安である。

 海外で着物の仕立てをしている人たちは、着物について何も感慨を持ってはいないだろう。着物の仕立ては単に賃金を得るための手段であり、着物の文化や着物の将来など眼中にはない。更に賃金の高い仕事があれば簡単に移ってしまう。いつか韓国大島と同じような運命をたどってしまうのではないかと思う。

                                      つづく

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