明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-75 大雪・きもの

ゆうきくんの言いたい放題

 今年のクリスマス寒波には驚きました。ここ山形では、例年「どか雪」が降るのは珍しくはないけれども、今年は中国、九州、鹿児島まで大雪に見舞われている。我々東北人は雪には成れているが、九州の人達はさぞ困っている事と思う。

 さて、雪の時の着物対策は、と言えば何が思い浮かぶだろうか。日本で着物は昔から老若男女、貴賤の区別なく一年中着て来た。暑い夏から寒い冬まで。もちろん雪の降る日も着物を着て来た。

 昔の貴族は雪が降る日は外には出なかったのかもしれない。しかし、私の様な庶民は暑かろうと寒かろうと雪が降ろうと雷が鳴ろうと家に籠ってはいられない。大雪の日でもきものを着ていたはずである。雪の日は雪の日の出立があった。雪の日はどのような出立が着物に相応しいのだろう。

 このような話題を取り上げるのは、最近、雪の中を着物姿で歩く人が少なくなったからである。雪の降る中を、または雪深い中を着物姿で歩けば汚れと共に濡れが気になる。また雨とは違って、深い雪が足元をおぼつかなくさせる。はて、雪の中で着物は何を着ていたのだったかな、と改めて考えてしまった。

 雪の中のきもの姿と言えば、まずコートがある。コートは雪に限らず冬に限らず春でも夏でも着られる。着物にコートを着る意味は、汚れを避ける為と暖を得る為である。春夏のコートは主に汚れを避ける為を目的としている。

 訪問着や留袖で外を歩くわけには行かない。風に吹かれ、車や電車に乗れば汚れや擦れが気になる。夏にコートと言うのは、もっぱら汚れを避ける為である。シースルーコートや紗のコートなど、夏は「涼しいコート」が用意されている。

 冬のコートには暖を得る意味が大きい。洋服と同じように真冬には、暖かいコートが必要である。加えて雪の日は雪に対する備えが必要である。雪の日には、どんなコートを着たらよいのか。

 昔・・・江戸時代頃には雪の日は、蓑笠姿だったかもしれない。しかし、現代はそのような話をしてもしょうがないので、明治あるいは大正時代以降を考えて見る。

 雪用のコートの春夏のコートとの一番の違いは、保温性と耐水性である。耐水性と言う意味では、現在防水加工を施した雨コートがあるが、雨コートでは保温性の点で脆弱である。暖かくて雪を被ったり付いたりしても良いコートでなければならない。

 冬の防寒コートで最も立派なのは「輪奈コート」である。別名「輪奈ビロード」と呼ばれるが、横糸と共に鋼線を織り込んで、織り上がった後に鋼線を抜きビロードにする織物である。ビロード生地、それもループ状のビロードの為に一反の太さは通常の縮緬の倍以上になる。

 この輪奈ビロードに裏を付けてコートに仕立てる。東京や関西では道行コートの様に仕立てる場合が多いが、東北など雪国では裾までの長コートで仕立てる。防水加工を施した輪奈コートは、暖かくて耐水性耐雪性にも富んでいる。とは言え生地は正絹なのでビショビショに濡らすわけには行かないが、寒い雪国ではコートに付いた雪はそう簡単には溶けない。コートに付いた雪は手で払えば容易に落ちるので、さほど問題はないのだろう。

 この輪奈ビロード地は最近見なくなった。もう織ってはいないとも聞く。数年前に仕入れた輪奈ビロードが一反あったけれども昨年売れてしまった。これから手に入るのか分からない。

 また、この輪奈ビロードを仕立てられる人がいなくなっている。輪奈ビロードに限らず、紗袷や道行衿以外のあまり需要の無い仕立てができる和裁士が少なくなっている。

 これから輪奈ビロードが手に入るのか。仕入れられたとしても仕立てられるのか、心配である。

                                             つづく

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