全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-83 得する街のゼミナール「きものの見分け方」(その19)
江戸小紋を染める時に使う伊勢型紙は、幅が40cm弱。反物の幅より狭く、長さは色々ありますが、鮫小紋や行儀、萬筋などの細かい柄のものは20cm弱の型紙を使います。反物の長さは約12mありますので、単純計算すると20cmの型紙を60回以上接いで染める事になります。型継の跡は一切無いように継いでゆくのですから、染士には根気と技術が求められます。
型の幅が反物幅より狭いので、染上がった反物は両脇に無地の部分ができます。これを「耳」と言っていますが、型染には「耳」があります。
一方、捺染の江戸小紋には「耳」がありません。捺染は生地をローラーに挟んで染めて行きます。生地を挟む一方のローラーが染める方になっていて、回転しながら染めて行きます。従って型継の跡は全くできません。どこまでも同じ柄を染めて行く事ができます。
捺染の場合は型染と違って「耳」ができません。反物の巾一杯に柄を染めて行きます。染めるローラーの型は反物幅よりも広い物を使っているのでしょう。柄は反物の両端いっぱいまで染められます。
型の幅を狭くすれば「耳」はできそうですが、そうした場合真っ直ぐに染めなければ「耳」は左右にヒョゴヒョゴになってしまいます。ローラー捺染では職人技の様には染められませんので、それを防ぐために幅の広い型を使っているのだろうと思います。
今申し上げましたように、型染は「耳」があります。そして捺染の場合は耳がなく反物幅いっぱいに柄が染められています。つまり、
型染の江戸小紋・・・「耳」がある。
捺染の江戸小紋・・・「耳」がない。
と言う明確な違いがあります。これで型染と捺染を簡単に見分ける事ができるはずです。
今「はずです」と申し上げましたが、ここで話をやめてしまうと大変に事になります。今日覚えて頂きたいのはこの後の事です。
今市場には型染の江戸小紋と捺染の江戸小紋が流通しています。前述した通り、型染の江戸小紋には「耳」があります。しかし、捺染の江戸小紋には「耳」がある物とない物があります。捺染は耳がなく反物幅いっぱいに柄が染められているのですが、実は捺染の江戸小紋の「耳」は後から染められた物です。
捺染の江戸小紋の「耳」は柄を染める時の付けられたのではなく、染上がった後にわざわざ「耳」を染めたものです。何故わざわざ「耳」を付けるのでしょうか。
その意図ははっきりとしないのですが、確かに見た目に「耳」が付いていると、型染と同じような風格があり良く見えるのです。しかし、それが曲者です。消費者にとってその江戸小紋が型染なのか捺染なのか分かりづらくなります。と言うよりも、知識のない場〆て江戸小紋を見る消費者はどちらも同じに見えるでしょう。
今、型染の江戸小紋は30万円以上でしょう。一方捺染の江戸小紋は10万円以下が妥当と思います。
一見同じように見える型染と「耳」の付いた捺染ですが、その見分け方は実に簡単です。
つづく