全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-83 得する街のゼミナール「きものの見分け方」(その29)
「着物の見分け方」と言う話をしてきました。大分長く話をしましたが、そう多くについて話せたわけではありません。むしろ「着物の見分け方」の極一部と言っても良いでしょう。今回の話を全てご理解いただいても着物の鑑定士にはなれません。
全てお話しできなかったのは、私の知識不足もありますが、「着物に関して・・・」と話しをしようとすると膨大な時間が必要です。着物は日本人が長い年月を掛けて積み上げた文化ですから、そう簡単に理解できるものではないからです。
今回「着物の見分け方」について話しました主旨は、皆さんに着物の鑑定士になって頂く為ではありません。今着物業界は大変おかしな業界になってしまいました。私はHPで繰り返し申し上げている事なのですが、消費者が消費者として真っ当な扱いがされていないのです。
その原因のほとんどは業界側にあるのですが、消費者の皆さまが少しでも着物を見る知識を養い。正しい買い物ができるように着物の簡単な見分け方をお話し致しました。
「着物の見分け方」と言っても「何を見分けるのか」と言う目的をはっきりとさせなくてはなりません。
「この訪問着は〇〇と言う染だ。」とか、
「この織物は××ではない。」
と言うようなテクニカルな見分け方のみを追求すると、自分がどんな訪問着を、どんな帯を締めたいのかが分からなくなってしまうかもしれません。
着物選びは、まず自分がどのような着物を着たいのか、どのような帯を締めたいのかをはっきりすることから始まります。もちろん初めて着物を見る人は、自分がどんな着物を着たいのかも分からないかもしれません。それは着物について少しずつ覚えながら分かることかもしれません。
その場合、初めて着物を着る人には本来呉服屋さんが指南しながら本人の好みを選んで行くのが本筋ですし、昔はそうだったのでしょう。呉服屋さんだけでなく昔は母親や祖母など着物を知り尽くしている人が指南してくれたはずです。
現代は母や祖母、周りの人達は着物の事を全く知らない人も多いでしょう。すると着物に興味を持った人は呉服屋さんに相談する事になります。しかし今の呉服業界は昔とは違います。昔のように指南してくれる呉服屋ばかりとは限りません。価格もまちまちです。
そこで最低限の着物の見分け方、手間の掛かった染物や織物なのか。あるいは現代のハイテク技術で簡単に精緻に染められた染物なのか等、着物の見分け方を少しでも身に付けておけば大きな間違いはしないと思うのです。
文中、江戸小紋の処でお話ししましたが、染屋は私が分からないと思って「捺染」を「型染」と偽って説明しました。本当の呉服屋が捺染と型染の見分けがつかないはずはないのですが、今の呉服屋は染屋にその程度に見られています。
これを呉服屋と消費者の関係にも置き換えられます。消費者を騙そうとする呉服屋があったとすれば、知識のない消費者は簡単に騙せるでしょう。しかし、もしも消費者が少しでも知識があり、呉服屋の説明に対して、
「えっ、これは〇〇ですが、〇〇でしたらどうしてこうなのですか。」
と切り返したとするとその呉服屋は掌を返すでしょう。テクニカルな染織法の知識を持っておけば、着物のより良い購入ができると思います。
つづく