全日本きもの研究会 きものQ&A
157.初めまして
質問者
ゆうき様。 初めまして、「旅から旅さん」の掲示板にもカキコさせていただいたのですが、着物の「格」なるものはゆうき様が詳しいとの事ですので、お尋ねさせてください。
2月に主人の妹の結婚式があります。
「着物は好きなのに自分では着ることができないし、振袖しか持っていないし・・・」
という私です。いい機会ですので着物で出席したいのですが、既婚者で親族である私は「黒留袖」を着るのが普通かと思うのですが、他の身内もきっと着物でなくても「黒」もしくは「黒系」のものを着てくると思うのです。(実際、私の結婚式では叔母達は黒か黒系の洋服、男性もみな黒の礼服でした。
従姉妹たちは色とりどりに出席してくれましたが・・・) ですので、「色留袖」で出席したいのですがそれは着物のマナーとしてどうでしょうか?(まだ20代なのに黒留袖は地味では?とも正直思っています。)
調べたら「五つ紋であれば黒留袖と同格」とは書いてあったのですが、色留袖の五つ紋は留袖としてしか着られないとも書いてありました、せっかくですから三つ紋等にして訪問着としても使えるものにしたほうが着る機会は多くなりますよね? 他で聞いたところ、「マナーとして言えばマナー違反になるのでは?分かる人が見れば分かってしまうから、「恥」ととらわれるかも・・・」とご指摘を受けました。
主人側の身内にそこまでうるさく言う方はいないとは思いますが、お相手のご実家は秋田で農家をされているとか。そういう方たちは格式を重んじるのでは?と心配になります。
義妹や義父母に恥をかかせるわけにはいきませんので、どうしたものか悩んでおります。
「マナー違反になるのでは?・・・」
と仰っていた方は素人の方でしたので、着物のプロのご意見をお聞かせください。
ちなみに、「訪問着」で出席は論外ですよね? 長々とまとまりのない文章で、申し訳ございませんがよろしくお願いします。
ゆうきくん
「○○の時には何を着たらよいのか」という御質問は度々頂戴いたします。 きものを着る時には皆さん頭を痛められることがようです。
「○○の時には××を着なければならない。××以外は着てはならない」
というケースはほとんどありません。しいていえば結婚式の場合、新郎新婦のご母堂、雌仲人は黒留袖を着なければなりませんし、黒留袖以外ではおかしいでしょう。
しかし、新郎新婦の祖母、既婚の姉妹、叔母も黒留袖を着ますが、最近はそうでないケースも多いようです。新婦の姉妹、義姉妹でしたら色留袖や訪問着を着るケースも増えています。
きものの仕来りは誰が決めるのでしょうか。着付けの先生、呉服屋さん、きもの好事家…いずれも違います。きものの仕来りは長い年月をかけて日本人が創り上げた物です。しきたりは云わば習慣なのですが、習慣は時と共に変わりますし、地方によっても違います。それを頭に入れて考えてください。
文章の中で、幾つか気になることがあります。
「他の身内もきっときものでなくても黒系のものを着てくると思うのです。」
…きものの黒の意味と洋服の黒の意味は全く違います。黒の洋服に合わせて黒のきものという必要はありません。
「まだ20代なのに黒留袖は地味では」…黒留袖には若向きも地味向きもあります。黒留袖が年寄りのきものということではありません。黒留袖は既婚者のステータスと考えてください。
「五つ紋であれば黒留袖と同格」…私はこの言葉を始めて聞きます。きものの指南書、着付教室、きものマニアなど(私も含めて)きもののしきたりについては三者三様に答えます。一人の人の言葉に固執しないで考えてください。
「三つ紋等にして訪問着として使えるもの」…色留袖と訪問着は別物です。三つ紋の色留袖を訪問着とは呼びませんし、用途も違うと思います。
「分かる人が見れば分かってしまうから」…分かる人とは誰のことでしょうか。わかる人達は皆全く同じ見解を持つものでしょうか。「分かる人」に振り回されれば何を着てよいのか分からなくなるでしょう。
いろいろと書きましたが、結論めいたことは次のようです。
新婦の義姉妹である静香さんは黒留袖を着て行くのが筋でしょう。しかし、色留袖や訪問着を着ても構いません。新婦の母親は黒留袖を着るとして、新婦の既婚の姉妹(いらっしゃるかわかりませんが)、祖母、叔母達が黒留袖を着るのかどうか。彼女らが訪問着や色留袖あるいは洋服の場合、義姉妹である静香さんが黒留袖を着るのは目立ちすぎるかもしれません。その場合かえって訪問着などの方が場に合っているかもしれません。
相手の方が仕来りを重んじて着るべき人が全員黒留袖、ということは充分に考えられます。そのときはどうするのかも考えなくてはなりません。 私が皆さんに申し上げているきもののマナーとは次の三点です。
・ 他人に不快感を与えないきもの
・ その場にあったきもの そして、結婚式に限っていえば、
・ 結婚する人(この場合義妹)に対して祝福する気持ちが表されるきもの
一番大事に考えなくてはならないのは義妹さんの気持ちです。どのように祝福してもらいたいのか。今後一生付き合う新郎の実家の方々の事も考えておられるでしょう。その気持ちを踏まえた上で、義父母の事を考えなくてはなりません。
御当主である義父が新郎の家に対してどのように臨みたいのか。以上の事を良く相談しながら着るきものを決められてはいかがでしょうか。
どのきものを着たら義妹さんの祝儀に相応しいのか、その場を盛り上げられるのか、それを考えるのは難しいことですが、日本人の心のゲームです。
ご自分の新郎新婦を祝福する気持ちがうまくご両人や相手のご家族に伝わった時、きものを着てきて本当に良かったと思えるでしょう。
質問者
返信ありがとうございました。
あまり考えすぎなくてもよいのですね。 義父、義母とも相談して見ます。
ゆうきくん
考えなくて良いのではなく、考え抜いてください。
何を着るかではなく、どうしたらお二人を祝福できるかということを。
質問者 2
こんにちわ、静香さん、葬式・法事と結婚式ほど、他人サマの事例が役に立たないものはありません。
「どういった家同士の結婚なのか」「お互いの家がどこの出身なのか」「自分の立場は」「誰が招待されているのか」「会場はどんなところか」などなど、ピンからキリまで、全く異なるといっていい程です。
「こちらの常識は、あちらでは非常識」なことも、十分にありえます。
「この格好なら、どこでも安心」というというのはありえません。私の婚家では結婚式なら「同集落の在住者」という立場でも「妊婦でもなければ、洋装は非常識」ですし、他の場合では「若いくせに着物、まして黒留袖なんて」ということもあります。
一番安心なのは、親族側で、それなりに揃えることです。秋田の農家ですと、あちら様は、揃って黒留袖かもしれません。でも、それよりも、自分側の親族が、何着てくるのかが一番重要です。
義父母様が一番頼りになると思います。私も、夫側の親族の冠婚葬祭には全て夫の両親に指示を仰ぎました。「今回はコレコレの格の着物で着てね」「今回は洋服で」と、ちゃんと教えてくれました。 私の結婚式の場合は、母が祖母と協力して、親族内で何を着るかの相談にあたっていました。
質問者
優妃讃良さま。そして、アドバイスしてくださった皆様。返信ありがとうございました。お礼が遅くなり申し訳ございません。
黒留袖を着て「若いのに・・・・」と文句を言われるのでは、 たまったもんじゃありませんね。 その土地によって色々なのだと、勉強になりました。
実は、今回この場で相談に乗っていただき、たくさんのアドバイスを いただいたのですが、最近になって義妹の結婚式について判明した事は、 会場が結婚式場ではなく、「レストランウェディング」だという事でした。
場所柄、アットホームな感じで。という事で両家のお母さま方は、 洋服で出席するとの事でした。 私が結婚式と聞いて、勝手に「会場は結婚式場」と決め込んでいました。本当に先走り過ぎです・・・・。
アドバイスを下さった皆様、お騒がせして申し訳ございませんでした。 まだ、身内の結婚式はありますので、今後の参考にさせていただきます。 ありがとうございました。
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