明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 きものQ&A

513.いわゆるコーディネートについて  

きものQ&A

質問者

 ゆうきさん(^^)こんばんは。また、質問させてください。
 
 今年は、何の影響なのか、春の花の開花が例年よりも早く、・・・そのため今年の桜の見頃を見事に逃してしまい(涙)代わりではナイのですが、友達と藤を見に行こうと約束をしまして、13日の土曜日お天気もよかったため2人で悪戦苦闘しながら着物を着て藤を見にいきました。(藤、とてもキレイでした)
 
 その藤会場の中の1つに野点をしているテナント?(と、よんでイイのかどうか・・?) の着物を着た年配の方達が私たちの所に来られて着物の話に花を咲かせていましたが、・・・ 一人の年配の女性が、私の着物と帯のコーディネートを見て、
「あら、あなたコレは間違えている。ダメよ、せっかく大島着ているのに、大島が泣くわよ。まだあなたは着物をよく知らないのね紬はね、織の着物だから、染めの帯じゃないと。そしてどんなに高くても紬は普段着扱いよ。」
と・・・(初対面で公衆の面前で・・・泣)
 
 その時の私のコーディネートは、薄いグレーの大島に藤色でタレに葵の刺繍のある帯。ゴツい織の帯ではなく葵の葉が地紋のように入った遠くから見たら無地に見える帯です。(ファイルに着物の生地と帯の一部を添付しました)紬に博多織の帯やミンサ-織の帯を合わせる事もある事を聞いた事や見た事もあります。
 
 藤の鑑賞という場面で自分のイイと思ったコーディネートが周りの不快を買っているのなら、改めなければならないとは思いますが、だんだん分らなくなってきました。
 
 基本としては、染めの着物に織帯・織の着物に染め帯なのでしょうけど、大島に織の帯なら博多帯でなければならないのでしょうか?
 
 実は、それもアウトなのでしょうか?
 
 そしてどんなに高くても大島紬は普段着かもしれませんが、藤の鑑賞に着て行くのもアウトなのでしょうか?
 
 その方は、ソコの野点をしているお茶の先生なのだそうです。お着物の先輩としてご教授して頂いたのですが、なんだか泣きそうになった時間でした。
 
 またまた長文で分り辛い文章になってしまいましたが、教えて下さい。 よろしくお願いします。

ゆうきくん

 ご投稿の内容を読んで、私は呉服を取り巻く環境がこのようなものであるのかと思えば、嘆かわしく、また嘆かわしさを通り越して憤りさえ感じます。
 
  さて、一つ一つお答えします。 まず、
「織のきものには染の帯でならなくてはならない」
という命題についてです。
 
 きもののTPOについて断定的に説教したがる人が多いのですが、私は好みませんので次のような問いを用意しました。そのお茶の先生に聞いてみてください。(実際に聞くと大変なことになるでしょうから自問自答してください)
 
・「紬の袋帯」というものがあります。この帯はどんなきものに締めたらよいのでしょうか。
 
・「紬の染帯」というものもあります。この帯はどんなきものに締めたらよいのでしょうか。
 
・博多の帯(献上や紋織)を織のきもの(紬)に締めている姿を見かけたことは無 いでしょうか。もし見かけたとするならば、どの位の頻度でしょうか?。稀な例でしょうか?。そしてその人達は着物の常識を知らない人達なのでしょうか。
 
・紬に後染めした着物もあります。この着物は、染めの着物・織の着物どちらに属するのでしょうか?。そしてその着物にはどんな帯を合わせるべきなのでしょうか?

 次に、
「そしてどんなに高くても紬は普段着扱いよ。」
について。
 
 その言葉自体は、ほぼ真実です。紬はフォーマルにはなりえません。(少なくとも今までの日本の伝統では) しかし、問題はそのことでは無いと感じます。

 りーぽんさんがお出でになった藤の鑑賞は普段着で行っては悪い環境だったのでしょうか。友人と花見に行くのはフォーマルな環境でしょうか。
 
 状況がよく分からないので、推測でしか書けないのですが、りーぽんさんが友人と藤を見に行ったところ、そこでたまたま野点の席があったと言うことでしょう。野点を目的に行ったわけでは無いでしょう。
 
 その先生にして見れば(これも推測の域をでませんが)自分のお茶席に着た人が紬を着ている、というのが許せないのでしょう。 しかし、ここまでくると着物のTPOとか常識と言うものを越えて倫理観の問題だと思います。
 
 自分の知識が絶対であると人に説教し、自分とは関係ない人をも自分の弟子であるかのごとく振舞うのは着物を着る以前の問題です。
 
 そのような人達が着物を着る環境を悪くさせ、着物離れに拍車を掛けているのだと思います。 余りに腹立たしく、言葉を選べずに返信が遅くなってしまいました。

質問者

 お返事ありがとうございます。
 
 ゆうきさんのお返事を読ませて頂き、自分の着物に対するスタンスを変える必要はナイのだと思いました。
 
 私の地元は鹿児島です。 大島紬の産地ですが、こういった屋外での鑑賞などに着物を着て鑑賞する人は稀です。 正月三が日に島津の仙巌園。通称「磯庭園」が着物を着て来園すると入園料がタダになるため、その時に男女問わず大島紬を着て来られる方が多かったですが、普段街ではあまり着物を着た方自体を見かける事はあまりありません。
 
 自分が最近着物に興味がわいてきたからと、人見物してどうこう言うのも、おこがましいと思いますが、ほんっとに悲しい位お着物を着ている人を見る事がナイです。

 藤を見に行った友達は、私の高校時代からからの友達で、唯一の着物友達です。 彼女とお出かけをする時は、着物を着て出かける計画を立てて(着物で飲みにも行きました*^^*)着物を着る機会・触れあう機会を増やそうと話しています。
 
 その友達も、初対面のお茶の先生(もう会う事はありませんが)にコレどうだこうだと言われてちょっと引いていました。(縦縞の小紋(江戸小紋ではない)で最近どの呉服店でもあまり見かけない為なのか、ソレはリサイクルでしょ?とか言われてました。友達は安く見られた様な気がしてと気にしてました。悲)
 
 着物の先輩としてのアドバイスはありがたいとは思いますが、相手が気にして着物を着たくなくなる様な発言は間違えてるのだと、お返事を読み自分の中で冷静に考えられました。

 決まり事に囚われて、着物はやっぱり難しいと倦厭・嫌厭されて数少ない着物友達を減らしたくは無いですし、何より着物を楽しみたいです。
 
 結城さんのこのページにはいつも助けられます。 本当にありがたいです。
 
 まだまだ勉強不足ではありますが、今回の出来事を友達にも胸張って気にする事はナイと伝えられます。(^^)
 
 ありがとうございました。

参照:「きもの春秋 5. きもののしきたり」
参照:「きもの春秋終論 Ⅲ-ⅱきもののしきたりは誰が決めるのか」
参照:「きもの春秋終論 Ⅲ-ⅲ本当のきもののしきたりとは」
参照:「きもの春秋終論 Ⅵ-26.再々・・・度、着物のしきたりについて」
参照:「きもの春秋終論 Ⅳ-ⅵTPOで着物は崩壊しないか」
参照:「きもの講座 7. きもののしきたり、日本のしきたり」

 

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