明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 きものQ&A

158.日本製について

きものQ&A

質問者

 はじめまして。ゆうき様。

 きもの春秋、興味深く拝見させていただきました。 消費者側からも、考えさせられることがあり、うーむと 思わず唸ってしまいました。 」
 
 早速、質問ですが、中国問題で和装小物のほとんどが中国製になって いるなか、まだ日本製があると記述されているのですが、 それは、はっきりラベルに日本製と入っているのでしょうか?
 
 今日店で帯締めをみたのですが、中国製というのはあったのですが 日本製と入っているのは見ない・・・ ただ「絹100% ○○組合」というようになっているだけでした。そして値段は中国製の何倍もしました。こういうのが日本製なのでしょうか?
 
 手持ちで、日本製と思って買ったもの(理由:デパートで高かった。職人展で その職人さんが織ったといわれた)も、日本製とも中国製とも明記されていません。
 
 私が考えたのは、絹そのものが輸入品だから「日本製」と表示されない・・のか?ラベルが古い(原産地表示前)のか・・・? 教えてください。 よろしくお願いします。

ゆうきくん

 RES遅くなりすみません。
 
 原産国表示に関しては私も小物問屋さんの、
「原産国表示は義務付けられていますから」
という言葉を鵜呑みにして深く調べておりませんでした。
 
 原産国表示については、法律ではなく業界団体の取り決めのようです。法律では、景品表示法第四条に
「一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害する阻害するおそれのあると認めて公正取引委員会が指定するもの(は表示してはならない)」
とあります。
 
 法律は解釈が難しく、原産国とは原料を意味するのか、半製品を意味するのか、完成品を意味するのかなど議論になっているようです。国会では帯を織った国が原産国なのか仕立てたのが原産国か、という意味の無い議論もなされているようです。
 
 そういう訳で和装小物の原産国表示が無いものは必ずしも違法ではないようです。法律は大変難しいので分かる人がおられたら教えてください。 しかし、中国製は「中国製」と表示するようになったのはそれなりに訳があるようです。
 
 ある小物屋さんの話です。「made in Korea」の表示のある製品をデパートに持ち込んだところ、裏に「北朝鮮製」の表示があるのを消費者が見つけ、クレームがつき、大量に返品されたということです。何故、北朝鮮製だと問題なのか、「north Korea」と表示しなかったことが問題なのか、あるいは他の問題なのかはさておいて、消費者の原産国に対する意識が高まっているということでしょう。
 
  知らずに買った中国製の製品が中国製と分かり返品されるとか、その類の事例が多いのかもしれません。外国製品には原産国表示があり、日本製にはないのは、日本製であれば表示しなくても後々トラブルが発生することは無いということかもしれません。
 
 法律で定められても定められなくても、問屋や小売り屋が消費者に対して明確な商品の説明の義務を負っているのは変わりません。消費者が小売り店に対して製品の説明を求める事がおかしな流通をなくす原動力となると思います。
 
 ただし、消費者には正しい判断が求められます。品質、価格、原産国が自分の求めるものとして的確なのかどうかを判断してもらいたいと思います。
「中国製イコール悪玉、日本製イコール善玉」
という単純な判断はかえって悪徳業者に付け入る隙を与えてしまうようにも思えます。
 
 法律に関してお答えできなくてすみません。

質問者

 お返事ありがとうございます。

 私もその帯締め買った後に中国製とわかり返品しました。 でも、締めやすそうな物でした。通常なら、普段着用にと そのまま購入したかもしれませんが、買った会場が「能登・金沢展」だったので、何もこんな所で中国製をと 思い返品したのです。お店の方が中国製は表示するように なったので、といわれたので、じゃ日本製表示は??と今回の疑問に至ったのです。
 
 法律はなにやらわかるようなわからんような感じですが、 100円の野菜でも、生産者が誰であるのかわかるのに・・・・ というのが正直思うところです。
 
 これだけ中国製品があふれる中、まだ選択肢があるのなら できるだけ日本製をと思っています。 しかし、これも悪徳業者の付け入るところとなるかもしれない・・・ 買う方もとても、疲れます。(ああ、愚痴ってしまった) でも、私も最初は沢山欲しくて小物類は中国製を買ってきました。
 
 でも、デパートで奮発して買った1本の帯締めが、とても、キュッ としまって、使い心地が良いのに気づき、以後は高くても、 日本製を買うようにしています。本数は増えませんが、出番は日本製が多いです。
 
 以前のものは、全く使わなくなりました。 今の着物ブームは若い人が多く、金銭的なものから中国製を買って しまうかもしれませんが、いつか、日本製の良さに気づくと思います。

 それまで、職人さんがいなくならないよう、結城屋さんのような 良心的なお店がなくならないよう応援しています。 長くなりましたが、これにて。ありがとうございました。 

ゆうきくん

 日本製を大事にして頂いてありがとうございます。
 
 日本の消費者が皆、さきさんのように日本製の良さを理解してくれれば問題は無いのですが、不特定多数のお客様を相手にすると、
「さて、どうしたものか?」
と思ってしまいます。
 
 日本の文化を外国人が理解するのは余程でなければ無理があります。日本人が外国の文化を理解するのも同じ事でしょう。
 
 二十数年前、中国の明綴れの帯が入ってきたとき、その柄に違和感を覚えていました。総柄の絵巻のようなその綴れには、どうも日本人離れした人が織られ、屋根先がせりあがった中国風の五重塔が織られていました。
 
 綴れは紋紙を用いませんので、織り手が主観で柄を織り上げます。絵巻の人の顔は現代の日本人とは似ても似つかぬ顔ですが、日本人なら誰しも王朝風の下膨れの顔は分かります。しかし、中国の人にとっては王朝風の下膨れの顔は教えられ頭では分かっていても、手先では理解することが難しいのでしょう。どうしても中国風の匂いのする帯でした。
 
 山形に奇妙な建物があります。ギリシャ、ローマ風のような、ゴシックともロネスクつかないヘンテコリンな建物です。奇をてらった設計士が創ったのでしょうが、私が思うぐらいですから、西洋の建築家が見れば「なんだこりゃ」と言う事になるのでしょう。
 
 決してナショナリズムに傾くわけではないのですが、日本の文化を継承し創造してゆくのは日本人しかいないと思っています。
 
 仰るように、技術を受け継ぐ職人さんが減っています。何とか歯止めを掛けたいと思いますが、消費者のご理解が何よりも必要です。
 
 現実との狭間で、消費者も我々小売業界も悩んでしまいます。

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参照:「きものフォトトピックス 5. MADE IN JAPAN」
参照:「続続きもの春秋 16. 中国問題」

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