明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 きものQ&A

219.ラベルをかたることは可能?

きものQ&A

質問者

 色無地を仕立ててもらった折りに、残布も受け取りました。
 
 その色無地、先日着物に詳しい方から「絶対ポリ」だと断言されてしまいました。 衣擦れの音や、しわのより具合、生地の重さから、正絹であるはずがない、と。
 
 残布には、 「利休好み」のラベル、 「AIU保険」の1年間保証シール 「堅牢 草木染」シール が貼ってあり、
「(色が同化してはっきりわからないけれど)丹波ちりめん 絹100%のスタンプ」
が左下に、よくわからないスタンプが数箇所、裏には商品番号と思われる番号のスタンプ、などなどが押してあります。
 
 購入時には、反物の状態で、その反物には同じ「利休好み」「堅牢 草木染」の ラベルがついていたのだけは記憶していますが、 その他のスタンプの状態については確認してませんでした。

 ポリの反物に、そういうラベルやらシールやらスタンプなどを押印するなど して、偽装する、なんてことは可能でしょうか??
 
 そういうラベルなり、シールなりを単独で入手しないと無理だと思われるのですが。。。 それとも、よく似た生地だけど、残布だけ本物だった、とか、、、

ゆうきくん

 初まるさんが購入された色無地が正絹なのかどうかということが一番お知りになりたいことだと思います。
 
 現物を見ていませんので断定的な事は申し上げられませんが、私の経験からお答えいたします。
 
 まず、残布だけが正絹かどうかについて。残布と仕立てた生地を見比べてください。同じ物かどうかは区別できると思います。風合いについては微妙なところもあるかもしれませんが、まず色を比べてください。違う生地を(同じ生地でも)全く同じ色に染めるのは至難の業です。人間の目は20万色を見分けられると言います。全く同じ生地を同じ染料で染めても目で分かるほど違いが出てくる場合があります。まして、違う生地を全く同じに染めたとしても生地の違いから違った色に見えてしまいます。
 
 正絹とポリエステルの生地を寸分違わず織って、全く同じ色に仕上げるのは「絶対に無理」とはいいませんが、そこまでして消費者をだまそうとするのは見上げたものだと思います。端布だけを偽造する、相当量を染めなければ採算が取れないということを考えれば、そこまでする確信犯はいないとは思います。両方を見比べてください。
 
 正絹かポリエステルかを見分けるには、糸を燃やしてみるなど方法はありますが、一番良いのは消費者センターに持ち込むことでしょう。鑑定してくれるはずです。
 
 さて、ラベルやシール、スタンプについてですが、「利休好み」や「堅牢草木染」というのは任意のシールですから、メーカーが勝手に貼っているものと思ってください。それらはメーカーが保証するもので、公的なものではありません。
 
 生地を公的に証明するものは「丹後ちりめん」のスタンプです。黄色のスタンプで横長の瓢箪型のマークの横に「丹」の字が書いてあります。最近は加えて「日本の絹」という赤い四角のスタンプも押されるようになりました。それらが捺してあれば「丹後ちりめん」イコール「正絹」と言うことになります。
 
 そこで、ご質問の「偽装する、なんてことは可能」かどうかということになりますが、そう言われれば「可能でしょう」としか答えられません。しかし、もしも偽装したとすれば、それはシャレでは終わらずに刑事問題、すなわち犯罪行為になります。
 
 現代はとんでもない犯罪がまかり通る世の中ですから可能性がないとはいえないでしょう。そこまでの偽装は未だ聞いたことがありませんが、そのような犯罪行為を犯す人がいるのかどうかについては私は分かりません。
 
 購入された呉服屋さんが信用できる店だとしたら、公的なスタンプがあれば間違いないと思いますが、その呉服屋さんに説明を求めるのが一番だと思います。呉服屋に限らず小売りやは売った物について説明責任があります。もしも、まかり間違って(そんなことはないと思いますが)その呉服屋さんが偽装されたものと知らずに仕入れたとすれば、それは適切に対処してくれるでしょう。

質問者

 丁寧にお返事くださってありがとうございました。
 
 ネットで、同じブランドの商品を検索したところ、 同じラベルやシールの商品に、 黄色の「丹後ちりめん 絹100%」のスタンプが押してある商品がありました。

 私のものは、ピンク地に黄色なので、スタンプと同化してましたが、 どうも同じスタンプと思われました。 仕立てあがった着物と残布は色・風合い、ともに同じものに思えました。つまりは、正絹で納得していいんだ、と安心しました。
 
 親が、つましい生活の中から貯めたお金で、 嫁入り道具として一式あつらえてくれたものの一つだったし、 母の古くからの知人が婚礼間近だからと紹介して下さった呉服屋さんだったし、訴訟なんてことになったら、母や知人もまきこみ、 母など、トータルの額が額だったので精神的におかしくなってしまうかも、 などと心配して、 誰にも知られないようにするには、自分の胸のうちにしまったままで泣き寝入りするしかないのか、 とまで思いつめてました。 呉服屋さんに対しても、本当は精一杯良くして下さっている心意気を、踏みにじってしまうところでした。
 
 きっちり調査するまでもなく、私は納得できました。 本当にありがとうございました。

旅から旅

 旅から旅です。 初まるさん、こんにちは。
 
 僕からも、ひと言。 偽装はないと思いますよ。 そんなことしても、なんの意味もないと思うからです。 ただ、正絹なのにポリの風合いに思えると言うのは、なにか原因があると思います。 ひとつには、ガード加工です。 強いガード加工、かけませんでしたか?
 
 次に考えられるのは、樹脂加工をどこかの段階で施された場合です。 ゆうきくんもおっしゃっていますが、一度、それを買われた呉服屋さんにお尋ねになったらいいと、思います。

 では、またね。(旅)

質問者

 心強いお返事、ありがとうございました。

 ガード加工はしていただいてます。 でも、シロウトならいざしらず、 和装のプロと言われる方でも、 そういう間違いをされるほど、風合いが変わるのでしょうか?
 
 生地の真偽については、もう十分お答えを頂いてますが、 後学のため、教えていただければ、と思います。 私にポリだと言われた方は、「生地が重い」こともポリだと断言されましたが、購入時に、呉服屋さんからは「目の詰まった生地だから他のより重い」 とうかがいました。(そのときに、他の反物と触り比べて説明を受けました)

旅から旅

 こんにちは。 反物を手にとって、生地をさわったときに、
「やけにツルツルするなぁ」
という生地があります。
「なんなんやろ、これ?正絹と書いてあるけど、ほんまかいな?」
と、首をひねる生地、なんぼでもあります。
 
 そういうときは、必ず、糸の燃焼試験をしますよ。 それも、緯糸だけではなく、経糸も試験します。 それで、燃やしてみた結果、
「はぁ~、正絹なんやなぁ、へぇ~」
と、呟きながら、自分の疑問を解消するのです。
 
 プロっちゅうたって、そんなものです。 ただ、直感だけで断定しーひんだけです。 最近は、消費者のかたが着物に仕立てる前段階で、ガード加工がかかっているものが多く見られますので、そのへんも、風合いが正絹をすこし離れて、化繊ぽく感じられるのかもしれません。

 生地の重さでは、判断の基準にはしませんけどね。
 
 では、またね。(旅)

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